参加費はひとり1万4,800円! 年老いた親がいそしむ「代理婚活」の実態
いまの世は、人妻にも亭主にもなれず、さりとて相手を探す場もない息子や娘に代わって、年老いた親たちが「代理お見合い」をすることが広く行われているのだと新潮が特集している。視点のよさと現代の問題点が凝縮されていると思うから、これを今週の第1位に推す。
6月29日、東京・青山で行われた「婚活サポート親の会」がそれだ。そのシステムとはこうだ。
「親がわが子のプロフィール(身上書)と写真を持って会に参加し、これだと思う相手の親と交渉して、話が合えば、身上書を交換する。その身上書を子どもが見て、『会ってもいい』となれば、『リアルなお見合い』が実現するというものである」(ノンフィクション・ライター黒川祥子氏)
心臓にペースメーカーをつけて参加している親もいるというから、命がけである。しかも九州や関西、東北などからも来ている。参加費は1名なら1万4,800円。
やはり36歳でエンジニア、甘いマスクをした正統派イケメンの親ところには行列ができ、額が後退した白髪頭の54歳男性の親のところはまばらだという。
親は「孫がほしい」という一念によるものだ。53歳の息子を持つ母親は、36歳の女性の母親に身上書を渡そうとするが首を振られる。しかし、これぐらいで諦めるようでは母親ではない。彼女は「結婚は親の責任」ときっぱりと言う。
彼女は息子の健康診断書を持参し、子どもの頃から成人するまでの写真をアルバムにして見せ、粘ること20分。見事、身上書交換が成立したという。
黒川氏は「子どもの結婚まで、親の責任なのか……。如何なものかという思いを禁じ得ないが、一方でこれを過保護と片付けられないのも無縁社会・ニッポンのもう一つの現実だ」と書いている。
ここで親が代わって婚活をしている子どもたちは、ある種のエリートである。特に女のほうは、結婚する意思が極めて薄い。だが、親のほうは子どもを産めない歳に近づいていく娘を放ってはおけないのである。
こうした恵まれた「子どもたち」は、ごく小数であろう。非正規社員で年収200万円以下の労働者が34%もいる。そうした者の多くの生活は親頼みである。結婚したくてもカネがない、出会う場所がない。そうした娘や息子は、こうした場で親が必死に相手の親を口説いても、身上書交換には至らないだろう。
婚活でも、格差がどんどん広がっているということである。東京でも、近所のお節介なおばさんが見合い話を持ち込んできて、母親と写真を眺めながら笑い合っていたのはそれほど遠い昔ではない。
近所付き合いが当たり前にあり、人と人とが裸で話し合うことができたあの頃が、妙に懐かしい。昭和は遠くなりにけりである。
(文=元木昌彦)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事