母よ、あなたは誰よりも美しく、逞しかった! 社会派コメディ『ママはレスリング・クイーン』
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レスリングのトレーニングは当然ながら、キツいし、痛いし、汗くさくなる。でも、家庭では良き母親としての役割を求められ、職場ではボスの顔色をうかがいながら働かなくてはいけない。終業後に体育館に集まって汗を流すことが、すごく気持ちいいことに彼女たちは気づく。家族や職場で話せなかったことも、リング上で体をぶつけ合うプロレス仲間には打ち明けることができた。家庭に恵まれたコレットだが、夫の浮気症にずっと悩まされている。ジェシカは男性経験は豊富だが、まだ本当の愛を知らない。「肉屋の怪人」と恐れられているヴィヴィアンは、実は『大草原の小さな家』に憧れる乙女であることが分かる。ストレスや不安なんかぶっ飛ばせ、とばかりに彼女たちは気合いを込めたアームロックやエルボードロップを放っていく。
フランソワ・トリュフォー監督の『アメリカの夜』(73)や『ゴダールの探偵』(85)など巨匠たちの作品に出演し、最近では『わたしはロランス』(12)で性同一障害に悩む主人公の母親役を好演したフランス映画界の名女優ナタリー・バイ(65歳!)をはじめ、『みんな誰かの愛しい人』(04)の娘役からすっかり大人の女優に変貌したマリルー・ベリ、日本でも大ヒットした『最強のふたり』(11)で美人秘書を演じたオドレイ・フルーロ、チョン・ドヨン主演の実録女囚もの『マルティニークからの祈り』(8月29日公開)で悪徳女看守を怪演した個性派コリンヌ・マシエロらのリング上での弾けっぷりが何とも心地よい。来日したジャン=マルク・ルドニツキ監督に聞くと、4人は週12時間の合同トレーニングを3カ月間にわたって続けたという。ぽっちゃり体型だったマリルー・ベリは10kgも体重が減るほどのハードワークだったそうだ。
ルドニツキ「ナタリー・バイはフランスでは大女優。彼女がまさか本当にこの役を引き受けてくれるとは思わなかった(笑)。でも、彼女は今までやったことのない今回の役を、すごく楽しんで演じてくれた。彼女はレスリングのトレーニングにも積極的だったけれど、開始してすぐに足首を捻挫してしまった。それからは常にスポーツドクターに付いてもらうようにしたよ。万が一のことがあったら大変だからね。でも、マリルー・ベリとオドレイ・フルーロは運動神経が抜群で、彼女たちのレスリングシーンの90%はスタントなしで撮影したんだ。彼女たちの本気具合は、スクリーンを観てもらえれば充分伝わるんじゃないかな」
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