女性の中に潜む少女性とおばはん的要素の妙味。『怪しい彼女』の“妖女”に男はみんな首ったけ!
#映画 #韓国 #パンドラ映画館
ひとりの女性の中には幾つもの人格が潜んでいる。少女のような純真な笑みを浮かべたと思いきや、次の瞬間には狙撃手のような冷たい横顔を見せる。あるときはコールガールのような思わせぶりな視線を送ったかと思えば、バーゲンセールに突撃するおばはんのようなしたたさを垣間見せる。まるでネコのようにクルクルと性格が変わる女性に振り回された経験を、多くの男性が持っているのではないだろうか。『サニー 永遠の仲間たち』(11)が日本でもロングランヒットしたシム・ウンギョン主演作『怪しい彼女』は、そんな女性ならではの特性を存分に楽しませてくれるエンターテイメント快作だ。『サニー』や『王になった男』(12)の大ヒットで韓国を代表する若手演技派女優となったシム・ウンギョンが、見た目は20歳の生娘だが、中身は70歳の毒舌ババアという怪しすぎるヒロインを実に楽しげに演じている。
『怪しい彼女』は藤子不二雄ワールドや楳図かずお先生の若き頃の傑作コミック『アゲイン』などを彷彿させるファンタジードラマだ。ヒロインは70歳になる鼻つまみ者のバーサンことオ・マルスン(ナ・ムニ)。ひとり息子を苦労して育てたが、その息子が大学教授となり、老人たちの溜まり場・シルバーカフェでいつもその自慢ばかりしている。自宅に帰れば、息子の嫁に小言の連射砲を浴びせまくり、病院送りにしてしまう。老害をまき散らし、周囲は大迷惑。ある日、家族が集まって自分を介護施設に入居させる相談しているのを耳にし、ショックを受けたマルスンは夜の街を徘徊する。行き場のないマルスンの目に留まったのは「青春写真館」という看板を掲げた小さな写真スタジオ。ショーウインドウに飾られたオードリー・ヘップバーンら往年のハリウッド女優たちのスチールにうっとりするマルスン。こんな私にだって輝いていた時分があったんだよ。そうだ、どうせもうしばらくしたら天国からお迎えが来ることだし、今のうちに葬式用の遺影を撮ってもらおうかね。あの嫁に任せたら、とんでもない写真を使われそうだしね。
「50歳、若くしてあげますよ」と写真館の主人は営業トークがうまい。気分よくマルスンがカメラに向かって笑顔を見せると異変が起きた。写真館を出たマルスンを街のチャラ男がナンパしてくる。「一体、70歳のバーさんを口説くなんて、この国はどうなったんだい?」と驚くマルスンは鏡に映った自分の姿を見て、さらにびっくり。なんと20歳の頃の姿(シム・ウンギョン)になっているではないか。再び手に入れた青春を思いっきり謳歌するマルスン。大好きだったオードリー・ヘップバーンにちなんで名前をオ・ドゥリと変え、第2の人生を歩み始める。シルバーカフェに行ってもオ・ドゥリがオ・マルスンだとは誰も分からない。懐かしのヒット曲をカラオケで歌うと、お客たちはやんやの大喝采を送る。20歳の女の子が人生の哀歓を込めて情感たっぷりにオールディーズソングを歌い上げるからだ。メタル系のバンドを組んでいる孫息子のジハ(ジニョン)が祖母だとは気づかずに「ボーカリストになってくれ」と声を掛けてきた。かわいい孫の頼みは断れない。かくして、メタル系バンドのボーカルを務めることになった、見た目20歳/実は中身70歳のおばあちゃん。テレビの音楽番組のオーディションを受けることになり、オ・ドゥリの快進撃が止まらない。
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