「不便だけど、不幸じゃない――」義足カメラマンが語る、11人のカッコイイ“義足美女”
#インタビュー #写真集
――「不便だけれども不幸じゃない」という視点は、実際に触れ合った越智さんならではの視点ですね。モデルになった女性の誰もが堂々と振る舞っており、それが写真の力になっているように感じます。
越智 そうですね。ただ、地方に行けば行くほど、義足を隠さなきゃならない人はまだ大勢います。だから、堂々とした義足の女性たちの姿を見せたいんです。あるモデルは、今では大丈夫だけど、切断した時にはすごく落ち込んでいた。だからこそ、当時落ち込んでいた自分のような人に写真集を見てほしいと話していました。
――この写真集を、どのような人に見てほしいですか?
越智 これがきっかけになって、世の中の人に義足で生活する人々を知ってもらえたらいいなと思います。彼女たちは、同じ境遇の人に対して大きなメッセージとなり、憧れを持たれるような存在だと思います。社会のいろんな場所に出て行って表現してほしいですね。
――「憧れられる存在」というのは、今までにない障害者像ですね。
越智 アメリカには義足のモデルがいますし、イギリスにも車椅子のモデルがいます。今回モデルを務めた11人のような女性が、一般のモデルとして活躍できる世の中になったらうれしいですね。バイクにまたがっている写真なんて、ハーレーの広告にぴったりじゃないですか?
――確かに、ハーレーに対するイメージも、ガラッと変わってしまいますね。ところで、今後、越智さんはどのような撮影をしていこうと考えているのでしょうか?
越智 パラリンピックについては、ライフワークとして撮影を続けようと思います。僕は、かつてパラリンピックという未知の世界を知ることで、世界が変わったような気がしました。パラリンピックを実際に見るまでは、障害者スポーツ=リハビリの延長という認識でしたが、実際にパラリンピックの競技を見たら、面白くて仕方がなかった。義足の人が100mを11秒台で走り、車椅子バスケでは、片輪でシュートを決める、走り高跳びでは片足で190cm跳んでしまったりするんです。
――スポーツエンタテインメントとして、パラリンピックに魅力があるんですね。
越智 ロンドンではスタジアムに満員の観客が押し寄せ、テレビでも朝から晩まで中継をしていました。そういった状況を2020年の日本に起こすためにも、選手本人たちの個性を見せる写真を撮っていきたいです。こんなに面白いパラリンピックの魅力を知らないのは、もったいないですよ!
(文=萩原雄太[かもめマシーン])
●おち・たかお
1979年、大阪生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業後、東京に拠点を移し、ドキュメンタリーフォトグラファーとして活動開始。ライフワークとして、2000年から国内外のパラリンピックスポーツの撮影取材に携わる。04年、パラリンピックの競技スポーツとしての魅力を多くの人に伝えたいとパラリンピックスポーツ情報サイト「カンパラプレス」を立ち上げる。12年には、陸上アスリート中西麻耶選手の競技資金集めに協力するため「セミヌードカレンダー」を1万部出版し、国内外で話題に。13年9月にブエノスアイレスで開催された2020年東京五輪パラリンピック招致の最終プレゼンテーションで、佐藤真海選手のスピーチ中に「北海道で撮影した跳躍写真」が使用された。
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