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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 山里×若林たりないふたりの挑戦
テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第60回

“何やってんだ世代”の意地 南キャン山里×オードリー若林『もっとたりないふたり』の挑戦

 山里の冒頭の宣言を受けて、もともと2回で終わるはずだった「40分間で漫才を作る」企画の第3弾(6月6日深夜放送)が実現した。

 若林は悪そうな半笑いを浮かべながら、そのテーマを「実写版『天才になりたい』」にしようと提案した。『天才になりたい』は、山里がかつて書き下ろした本のタイトルだ。「山里“ジーニアス”亮太」と「若林“クレイジー”正恭」の漫才を作ろう、と。

 山里は過去の反省を踏まえ、「とんだサイコ野郎だぜ!」「この自由は尾崎豊が求めてないやつ」といった、「若林くん対策ツッコミ集」を準備していた。その中には、自分の中でボツにした「ドクターフィッシュになってかかと食べてやろうか」という、使いどころの分からないものもあった。

 設定を王道の「結婚」に決めると、若林は「入場シーン」「司会あいさつ」「ケーキ入刀」「キャンドルサービス」「新郎が手紙を読む」「ブーケトス」と次々と自分がボケる部分をホワイトボードにメモしていき、それぞれの横に「山 セツ」と書き加える。そこに、山里の“センスツッコミ”を入れるということである。ここで打ち合わせ終了のブザー。構成だけは決まったが、具体的なボケやツッコミは一切決まっていないまま、漫才本番に突入するのだ。果たして、ふたりの漫才はただの雑談だったと思えた打ち合わせ中の会話なども伏線に使いながら、進んでいった。

 若林は山里にムチャぶりしたり、山里の想像する方向を微妙にズラすトリッキーなボケで、山里を困惑させつつも、そのツッコミとしての天才性を引き出す見事な漫才を完成させたのだった。そして最後のオチは、使いどころが狭すぎてボツになったツッコミ「ドクターフィッシュになってかかと食べてやろうか」だった。

 ふたりは以前、自分たちの世代には、ダウンタウンやウッチャンナンチャンのような世代を引っ張るような「突き抜けた存在」がいないと話していた。

「誰も先頭切ってるヤツがいない」
「『何やってんだ世代』なんじゃないか」
「俺たちの世代、がんばらなきゃダメだよな」(『オードリーのANN』)

 と、忸怩たる思いを語り合った。自分たちは「無難」にしようとするあまり「何かを起こしそうな気配がない」のではないか、と。だから彼らは決して「無難」ではないこの企画に挑戦しているのだろう。いまや、多くのテレビに出続け、一定の評価を受けているふたり。けれど、山里と若林にとって現状は、まだまだ芸人としての充足感が「たりない」のだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)

「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

最終更新:2019/11/29 17:58
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