サッカーW杯で目にする、漢字オンリーのフィールド看板「中国・英利」って何?
決勝トーナメントへと駒を進めるチームが現れ始め、いよいよ佳境に入ったワールドカップだが、コカ・コーラやソニー、アディダスなど、おなじみの世界企業が名を連ねるフィールド脇の看板広告に、見慣れない企業名が並ぶ。「中国・英利」。世界で数億人が視聴するといわれるワールドカップのスタジアムで、堂々と漢字表記の広告を掲げるこの企業の正体は、一体何者なのか?
広告主の正式名称は、「英利緑色能源控股有限公司」。中国河北省保定市に本社を構える、太陽光パネルメーカーだ。世界シェアでは10強に数えられる企業であり、ニューヨーク証券取引所に上場。従業員数は6000人を擁している。
2010年の南アフリカ大会で、中国企業として初のFIFAワールドカップのオフィシャルスポンサーとなったが、翌年の第3四半期には欧米諸国からのアンチダンピング課税や市場の低迷により、赤字に転落。その後、現在に至るまで、赤字が続いている。
そんな英利だが、全64試合で、それぞれ約8分間の広告枠を獲得。中国のネットメディア「網易財経」によると、今大会への協賛費および広告費は7,000万ドル(約71億円)と推計されており、おおよそ赤字企業とは思えない大盤振る舞いとなっている。
しかも、中国人と日本人くらいしか解読できない漢字での広告出稿である。コストに見合う価値はあるのだろうか? 広東省ブロック紙社会部記者は話す
「中国人のワールドカップへの関心は非常に高く、今大会だけでも、長時間にわたるテレビ観戦による過労で、少なくとも3人が死亡しているほど。視聴者人口を見ても、中国全土で1億人以上といわれており、世界で最もワールドカップを見ているのは中国人といえる。そんなワールドカップは、国内販売の拡大により起死回生を果たしたい英利にとって、またとない広告活動のチャンス。国際舞台での漢字広告は中国人の目には、『中国代表企業』と映り、イメージアップ効果も絶大。中国市場だけをターゲットとした広告でもペイする」
出場こそ果たしていない中国だが、ワールドカップ・ビジネスでは主役のひとりといえそうだ。
(文=牧野源)
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