大事なのはルールではなく体? AV業界ドラマ『モザイクジャパン』が映す、モザイクの向こう側
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実は、桃子はGALAXYZ専属の企画単体女優だったのだ。社内では至るところでAVの撮影が行われている。がく然とする常末をよそに、そそくさと撮影を再開する桃子たち。彼女は下着を脱がされ、服を引きちぎられ胸をあらわにされながら、あえぎ声を漏らすのだった。
桃子を演じるハマカワは、NHK大河ドラマ『八重の桜』や映画『闇金ウシジマくん』、舞台などで活躍する女優。もちろんAVの経験はない。ほかにも数多くのAV女優役が登場するが、そのほとんども宮地やハマカワと同様だ。彼女たちはすべてをさらけ出すように、大胆なセックスシーンを演じている。
だがもちろん、このドラマの主題はセックスシーンではない。
GALAXYZはなんの産業もない田舎町・萬曜町にオフィスビルを構え、「アダルトで町おこし」と、この町の住民のほとんどがGALAXYZ関連の仕事に従事している。
「お父さんのモザイクは、ただ消してるだけじゃない。女優さんのいいところを引き出している、って言われてるの」
と話す常末の父も、モザイク職人だ。
いわば、萬曜町はアダルト産業に“乗っ取られた”町なのだ。こうした何も資源のない田舎町と新興産業の関係は、ほかにいくらでも思い浮かべることができるだろう。そうした社会構造が抱えている問題も、えぐりだしている。
そして、このドラマのもうひとつの軸は、常末と桃子のいびつな恋愛模様だ。
「あなたを救いたい。分かります?」とAVを辞めるよう諭す常末に対して、桃子は言う。
「頭のいい人が、頭の悪い人見て、こいつバカだなあって思ってるとき、頭の悪い人も、頭のいい人を見て、こいつバカだなあって思ってるんですよ」
AVを辞めてもらいたい常末は、大金をかけて彼女をアイドルとして売りだそうとする。だが、彼女がやりたいのはAVだ。そこにしか自分の居場所がないと思っているのだ。お互い惹かれつつもかみ合わない思いが、痛く切ない。
「ハメ撮りしてください」
そう桃子は常末に迫るのだった。
「この国は棒も穴も、モザイクの向こうに隠す体(てい)がある」と九井は言う。
今、日本の社会がモザイクで隠しているのはなんなのか。日本の若者たちが抱えている闇はなんなのか。
「穴の奥の奥まで見えそうなヤツ撮ってよ!」
『モザイクジャパン』は、アダルト産業を舞台にしたドラマという体で、それらを白日のもとに晒そうとしているのだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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