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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.274

二階堂ふみは撮影現場で「鬼畜……」と呟いた! 常識に縛られない男女の危険な物語『私の男』

watashinootoko02.jpg紋別で2人っきりで暮らす淳悟(浅野忠信)と花(二階堂ふみ)。2人には誰にも知られてはならない秘密が隠されていた。

 淳悟の愛情を全身に浴び、花はひっそりと咲く食中植物のように育っていく。養父と養女との関係を越えた2人の結びつきを知った淳悟の恋人・小町(河井青葉)は、町を静かに去っていくしかなかった。大塩のおやじも2人の秘密に気づき、忽然と姿を消すことになる。北海道出身の熊切監督が描く『私の男』は、父と娘の禁断の関係そのものがテーマではない。北国の過酷な環境の中で、タブーやモラルに縛られることなく、ひとりの少女が力強く生き抜いていく、美しくも歪んだ成長物語なのだ。エログロ度数の高い、もうひとつの『北の国から』と言っていいかもしれない。

 熊切監督が二階堂ふみと出会ったのは、『莫逆家族 バクギャクファミーリア』(12)のオーディション会場。大人になったヤンキーたちの行く末をやるせなく描いたセンチメンタルバイオレンス『莫逆家族』のオーディションを受けるあたり、二階堂の男のロマンへの共感度がうかがえる。オーディション会場に集まった他の若手女優たちが元気よく「よろしくお願いします!」とあいさつする中、二階堂だけが不機嫌そうに佇んでいた。それを見た瞬間、熊切監督は「あっ、花がいた! 自分の意志で生きている女の子だ!」と思ったという。結局、二階堂は『莫逆家族』のオーディションに落ち、『私の男』のヒロインに選ばれる。R15作品である『私の男』は二階堂が18歳になるのを待ってから撮影がスタート。紋別でのクランクインに合わせるように、オホーツク海を南下してきた流氷がタイミングよく着岸。映画の神様が熊切監督に優しく微笑んだ。こうして、『私の男』のキモとなる二階堂と藤竜也の流氷の上での対決シーンが撮影された。セットでは到底表現できない流氷のパノラマがスクリーンいっぱいに広がる。

 人としてのモラルを説く大塩のおやじと自分の本能に忠実に生きようとする花との火花を散らす攻防が、不安定な流氷の上で繰り広げられる。ぐらぐらと揺れる流氷は、人間社会そのものなのだろう。オホーツクの大自然に比べ、2人が乗った流氷の塊はあまりにもちっぽけだ。ちょっとでもバランスを失えば、海にどぼんと落ちてしまう。このシーンの撮影で、二階堂は制服の下にドライスーツを着込んでいたとはいえ、合計4回も冷水の中へ潜ることを余儀なくされた。濡れた手袋をしたままだった二階堂の指先は感覚がなくなってしまったそうだ。

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