朝日新聞「吉田調書」をめぐる報道から考える、大メディアの影響力
#出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
さて、スマホはすっかり生活必需品になったが、道路や駅でスマホを見ながらノロノロ歩く若い連中を見ると腹が立つのは私だけだろうか。
私は、早稲田大学の学生が多く降りる駅からオフィスに通うから痛感するのだが、電車を降りてから改札を出るまでの間もスマホの画面を見ながらフラフラ歩く学生たちに、毎朝イライラさせられている。
文春にスマホを1日1時間以上見ている子どもは成績が下がるという特集があるが、私に言わせれば当たり前である。だが読んでみると、ちょっと視点が違うようだ。
山梨県の公立中学校の教師が、こう語っている。
「保護者から『スマホやめろと言ってもやめない。どうすればいいのか』という相談を受けることは珍しくありません。子供のスマホに頭を悩ませている保護者は本当に多い。使用時間の聞き取り調査を行っていますが、一日七時間以上と答える生徒が全学年にいました。私が調べたところ、スマホを一日二~三時間使う生徒の試験の点数は、平均的に八点ほど下がる傾向にありました」
これは当然であろう。「脳トレ」の監修を手がけた川島隆太教授らの調査結果によると、
「これまで、成績が悪い生徒は『スマホを長時間いじっていて勉強の時間がないから』と考えられてきました。ところがまったく違う結果が見えてきたのです。つまり、家でちゃんと勉強している生徒でも、スマホを使う時間が長ければ、家で勉強しない生徒よりも学力が下がっている傾向が統計的に表れたのです」
平日に2時間以上家庭で勉強している層のグラフで比べると、スマホの利用時間が1時間未満の生徒の平均点が75点に対し、4時間以上利用する生徒の平均点は57.7点と、17.3点の開きが出たそうだ。
勉強時間が30分未満の層では、スマホの利用時間が1時間未満の場合が63.1点、スマホを4時間以上利用する生徒は47.8点と、15.3点の差がついたという。
つまり、2時間以上勉強してもスマホを4時間以上使っていると、勉強は30分未満だがスマホの利用時間が1時間未満の生徒の方が平均点が高いという結果が出たのだ。
この調査は、仙台市の私立中学生約2万4000人に対して行われた「仙台市標準学力検査」と「仙台市生活・学習状況調査」を元に分析されたそうだ。
川島教授はその理由をこう語る
「テレビを見たりテレビゲームをしている時、脳の中の前頭前野という部分は安静時以上に血流が下がり、働きが低下することが分かっています。また、ゲームで長時間遊んだ後の三十分から一時間ほどは前頭前野が麻痺したような状態となり、機能がなかなか回復しません。この状態で本を読んでも理解力が低下するというデータもあります。また、テレビの長時間視聴を三年続けた五~十八歳の子の脳をMRIで解析すると、前頭前野の思考や言語を司る部分の発達が、長時間視聴していない子に比べ、悪くなる傾向はこれまでの研究で確認できています。つまり、スマホを長時間利用することは、ゲームで遊んだりテレビを長時間視聴した後の脳と同じような状態になって、学習の効果が失われるのではないかと考えられます。前頭前野の具体的な働きは、記憶する、学習する、行動を抑制する、将来の予測をする、コミニケーションを円滑にするなど、人間ならではの心の働きを司どっています。(中略)ですからスマホの長時間利用が脳に与える影響は、これまでの脳の研究データが示すストーリー上にあると考えても外れていないと思うのです」
さらに川島教授は続ける。
「グラフを見ると分かりますが、スマホの利用時間が一時間未満と答えているグループの平均点は、スマホをまったく利用しないグループよりも点数が高い。恐らく、気分転換や息抜きの道具としてスマホを上手に使うことができれば、良い作用をもたらしているのではないかと考えられます。(中略)スマホを使いすぎると子供の脳にどのような影響があるのか。私はこの研究にあまり時間をかけてはいられないと考えています。いま、電車の中では大人もみなスマホをいじっています。窓の外で桜が咲いていることにも気づいていないのでは、と思うほど画面しか見ていません。(中略)大人のこうした様子を見て子供もどんどんスマホ依存に陥っていくのです。今回の結果は、スマホの長時間利用の規制を真剣に考える時期にきていることを示唆しているのではないでしょうか」
昔テレビは人間を「総白痴化する」と言った評論家がいたが、スマホは確実に「亡国のオモチャ」かもしれない。
少なくとも、子どもには制限時間を過ぎたら使えなくする。学校や駅等の公共機関では電波を遮断する。クルマの運転中も同じ。そうした規制を早くするべきだと、私も考える。
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