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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第120回

日本エレキテル連合 「ネタ番組ゼロ時代」に輝く“衝動のコント”とは

 いわば、ほかの芸人のコントが物語性のある「映画」だとしたら、日本エレキテル連合のコントは一つの状況を切り取った「絵画」に近い。受け手は、絵画を鑑賞するようにして、ネタの細部をじっくり堪能してその世界に没入することができるのだ。

 実際、ネタ作りを担当する中野聡子は、自分の思い描く世界観に合わせて演技をする相方の橋本小雪を「真っ白なキャンバス」に例えている。中野という新進気鋭のアーティストが、ゴッホ顔負けのゴテゴテした厚塗りで橋本というキャンバスに絵筆を入れていく。そうやって、あのグロテスクで魅惑的な作品の数々が生み出されているのだ。

 もちろん、彼女たちのネタにストーリー性が皆無というわけではない。「未亡人朱美ちゃん3号」というネタが面白いのも、ひとひねりしたオチが鮮やかに決まっているからだ。「ダメよ~、ダメダメ」という決まり文句があれだけ繰り返されるのも、朱美ちゃんの顔が不気味に白く塗り上げられているのも、すべてに意味があったということが結末で明らかになる。ミステリー仕立てで、何度も見返したくなる傑作だ。

 「お笑いネタ番組ゼロ時代」という逆風をものともせず、着実にファンを増やしている日本エレキテル連合。見る者すべてを一瞬でしびれさせる、キケンな高電圧芸人だ。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

最終更新:2014/06/05 12:00
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