本当の“つながり”とはなんなのか――ネット時代の心の闇を描く『ディス/コネクト』
#映画
今週取り上げる最新映画は、ヤミ金融に群がる人々の騒動をバイオレンスとブラックユーモアを交えて描く邦画と、デジタルなつながりに依存し、真の絆を見失いがちな現代人に問いかける洋画の2本。いずれも劇的な筋立てと誇張した表現を含むが、現実にある問題を提示していることを確信させる力作だ。
『闇金ウシジマくん Part2』(公開中)は、真鍋昌平の人気コミックを山田孝之主演でテレビドラマ化、2012年に劇場版も作られた『闇金ウシジマくん』の続編。貸金業の資格を持たず暴利で貸し付け、容赦なく取り立てる闇金業者の社長ウシジマ(山田)のもとへ、暴走族のヘッド・愛沢(中尾明慶)にボコボコにされたヤンキーのマサル(菅田将暉)が連れてこられる。マサルに借金させろという愛沢の要求をはねつけたウシジマは、マサルを見習いで働かせることに。彼らを取り巻くライバル闇金業者、ホスト、風俗嬢、ストーカーの欲望と思惑が交錯し、壮絶なサバイバルが展開する。
仏頂面で鋭い目つき、まばたきさえほとんど見せない異色の主人公を、山田孝之が抑えた表現と圧倒的な存在感で好演。違法な金貸しを生業としながらも通すべきスジは通し、不遇な弱者に情けをかける一面も持つウシジマは、ままならぬ世の中をしたたかに生き抜くダークヒーローとして支持されているのかもしれない。4月公開の『そこのみにて光輝く』で重要な役を演じた菅田将暉が再びキーパーソンを熱演、同作主演の綾野剛もショートリリーフ的に顔を見せる。門脇麦、キムラ緑子、高橋メアリージュンが個性を生かして体現する三者三様の女の生きざまも印象的だ。
『ディス/コネクト』(5月24日公開)は、ネットやSNSに「つながり」を求め、落とし穴にはまって傷つき、立ち直ろうともがく人々を描くサスペンスドラマ。孤独な高校生ベンは、同じ学校の少年2人がSNS上でなりすました「少女」と親密なやりとりをするうち、求められて自身のヌード写真を送ってしまう。これが学校中にばらまかれたことでベンはショックを受け、自殺未遂を起こす。ベンの父親で弁護士のボイドは、パソコンに残った情報を手がかりに、息子が絶望した原因を探ろうとする。一方、授かった赤ん坊を亡くして夫との距離を感じるようになったシンディは、有料サイトのチャットルームで似た痛みを抱える男性と交流していた。だが、このサイトで使ったクレジットカードの情報が盗まれ、不正に使用されたことが高額請求によって判明する。
監督は、ドキュメンタリー映画とCMでキャリアを築いたヘンリー=アレックス・ルビン。ボイド役のジェイソン・ベイトマン、その妻を演じたホープ・デイビス、『オブリビオン』でトム・クルーズと共演し本作では野心的なテレビレポーターに扮したアンドレア・ライズボローといった演技派俳優たちによって、緻密に関係が絡み合う群像劇がスリリングに展開する。携帯やネットで「つながる」ことが当たり前になった現代で、実は人と人とのリアルな「絆」が損なわれていることを、現実に起こり得るエピソードを通じて浮き彫りにした。つながりが幻想だったと知って崩壊寸前の彼らに、再生への兆しは訪れるのか。スマホやパソコンを日々使う多くの観客にとって、警鐘と示唆に満ちた作品だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『闇金ウシジマくん Part2』作品情報
<http://eiga.com/movie/79578/>
『ディス/コネクト』作品情報
<http://eiga.com/movie/79831/>
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