「売春」と「救済」の同居……“出会い系”に救いを求める、シングルマザーの実態
#本
もちろん、その場限りの男が、根本的な解決を与えてくれるはずがない。それでもなお、彼女たちは、それにすがらざるを得ない。「出会い系シングルマザー」に絶望を感じてしまうのは、子育てのために体を売らなければならないからではなく(昔から、そんな境遇のシングルマザーは少なくなかっただろう)、出会い系サイトに救済を求めているからだ。
そんな彼女たちの姿を見て、鈴木は、あるいら立ちにとらわれていく。貧困と、絶望の中で生きるなら、いったいなぜ、子どもを産んだのか? 鈴木は「親による児童虐待のニュースを見た時と同じような気持ち」になる。それは「自己責任」ではないのだろうか?
しかし、そんな鈴木のいら立ちを氷解させたのも、また同じシングルマザーの姿だった。
「シングルマザーがシングルマザーである所以は唯一『子どもを手放さないこと』なのだ。思えば、子どもを手放してしまえば、どれほど身軽になるだろう。彼女らにとって合理的な生活・経済の再建を考えるなら、子どもを養護施設等の公的福祉機関に預けるのもひとつの手段なのだ。少なくとも彼女らには、帰属すべき実家や頼れる親族もいないのだから。それでも彼女らは、手放さない。その手に握った小さな手を、決して手放さない」
シングルマザーたちは子どもを愛している。だから、決して子どもを見捨てず、誰の手も借りずに、苦しい環境を生き抜いている。生活保護をもらわないのも、子どものためを理由にする母親は少なくないのだ。鈴木が取材した「NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長は、「出会い系シングルマザー」たちについて、こう語っている。
「とにかく彼女らに言えることは、売春をやっても生き延びてきたことを誉めてやることだと思います。とにもかくにも、子どもも殺さずに本当によくやった、大変だったね、助けは求めてもいいんだよ、と」
「出会い系シングルマザー」の彼女たちは、シングルマザーにおいても特殊事例だろう。けれども「喉元まで出掛かった『助けて!』という叫びを、声にできない」からこそ、彼女たちはそうならざるを得なかった。生活保護受給者に対する辛辣な視線や、シングルマザーは「自己責任」であると見なす風潮こそが、彼女たちから「助けて」という声を奪っているのではないだろうか。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事