『007』や『七人の侍』など、オマージュも多彩! 映画『クレしん』シリーズの魅力【原恵一/前編】
【オタクに”なるほど”面白い!オタクニュース・ポータル「おたぽる」より】
――この時期に観たいアニメとしてお勧めの劇場版『クレヨンしんちゃん』。そんな劇場版『クレしん』の魅力を監督別に特集。第2回目は、原恵一が監督を務めた6作品の中から『暗黒タマタマ大追跡』~『嵐を呼ぶジャングル』の4作品で、こんなところを知っていると観方が変わって面白いという見どころを紹介していこう!
第1回【本郷みつる編】はこちらから。
【原恵一編(前編)】
本郷みつるから監督をバトンタッチされた原恵一が、一人でコンテも担当したのがこの第5作。元々映画志向の強い原監督のテイストがにじみ出始めたのが本作だ。本郷監督作はファンタジーもしくはSFテイストが横溢していたが、原監督はリアルに重きを置いている。といってもギャグが基本の『クレしん』なので、きっちりとした線引きがあるわけではない。また、しんのすけの妹・ひまわりが初登場。しんのすけが家族の愛情を一身に受けるひまわりに嫉妬するのも見どころだ。
伝説の魔神ジャーク復活を狙う珠黄泉族、それを阻止せんとする珠由良族。ジャーク復活の鍵となる2つのタマのひとつを、ひまわりが飲み込んでしまったため、野原一家は珠黄泉族に狙われる。しんのすけは珠由良族のオカマ三兄弟と共に、珠由良族本部、青森県の「あ・それ山パラダイスランド」を目指す。
邪神復活阻止というお題目はあるものの、今回展開するのはタマの争奪戦。新宿二丁目を拠点とする珠由良族と銀座ホステス軍団の珠黄泉族の追跡劇がメインなのだ。原監督によれば“ロードムービーをやりたかった”という本作は、直接的なギャグよりもシチュエーションコメディを意識した構成になっている。自身の置かれた状況を確認した野原一家が、珠由良族から辛くも逃げて身を潜める先がニコニコ健康ランド、巨大スーパーマーケット「BIG RED SUN」と、日常の延長上にある場所ばかり。そんな日常でオカマとホステスがカーチェイスやアクションをガチンコで展開する。これが面白くないわけがないのだ。
そこかしこに原監督の映画愛を感じられるのも本作の魅力のひとつ。ローズ、ラベンダー、レモンのオカマの三人が野原一家の連れ合いとなるが、これは三人のドラァグ・クイーンが旅する映画『プリシラ』からの引用だろう。千葉県警の東松山よねが自称“グロリア”を名乗るが、これはマフィアの裏帳簿をめぐる争いに巻き込まれた少年を助けるグロリアを描いた『グロリア』からの引用。珠由良七人衆は、お分かりの通り黒澤明の『七人の侍』へのオマージュ。
総合格闘技的アクションをきっちりみせたいということで登場したのが、ロシアからやってきたヘクソンだ。珠由良七人衆とヘクソンの一騎打ちは、アニメーターの安藤真裕が担当。読心術で相手の攻撃を避けながら、一瞬で関節技を決めるヘクソンの怖さを見事に描写している。最近、総合格闘技的アクションは、アーノルド・シュワルツェネッガーが『ラストスタンド』で、ジャッキー・チェンが『ポリス・ストーリー/レジェンド』で、ドニー・イェンが『特殊身分』で、それぞれ披露している。流行の総合格闘技的アクションについて、劇場版『クレしん』はかなり先を行っていたようである。
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