“聖なる儀式”としてのカニバリズム(人肉嗜食)! 伝統を尊ぶ一家に代々伝わる秘密のレシピ『肉』
#映画 #パンドラ映画館
過酷すぎる宿命を背負ったパーカー家の長女アイリスを熱演したのは、『ザ・マスター』(12)で新興宗教の教祖一家の娘役を演じたアンビル・チルダーズ。アンビルは「モルモン教の家庭で育ち、子どもの頃の境遇によく似ていたわ。とても厳しい家で、家族の団結は強かったけれど、友達はできなかった」と自身の少女時代を振り返っている。次女ローズを演じたのは、カルト集団による洗脳の恐怖を描いた『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(11)で女優デビューを果たしたジュリア・ガーナー。青白い顔が『ビートルジュース』(88)の頃のウィノナ・ライダー、『アダムス・ファミリー』(91)のクリスチーナ・リッチーを彷彿させる美少女だ。本作への出演を「チャレンジが好きだし、こういう変わった役をやるのは刺激的だった。怖いといえば、すべて怖かった(笑)。でもある意味、そのためにこの仕事を選んだようなものだから。怖いと思うからこそ、エキサイトしてチャレンジしたくなるのよ」と話す。これからの飛躍が期待できそうな逸材である。近代文明を拒絶した生活を送るアーミッシュを世間に知らしめた『刑事ジョン・ブック 目撃者』(85)のケリー・マクギリスが隣人役なのも興味深い。
厳粛なる儀式としてのカニバリズムを描いた本作を観ていると、キリスト教における“聖体拝領”を思い浮かべずにはいられない。カトリック信者たちが分かち合うパンはイエス・キリストの肉を、ワインはキリストの血を意味している。愛する者と一心同体化したいという願いがそこには込められている。アイリスとローズもまた、家を出ていく前に最後の晩餐を開くことを決意する。最後の晩餐の席で注がれるワインは、かつてなく濃厚で生温かい。生きていく覚悟と狂気が隠し味となったパーカー家最高のディナーが始まろうとしていた。
(文=長野辰次)
『肉』
脚本/ニック・ダミチ、ジム・ミックル 監督/ジム・ミックル 出演/ビル・セイジ、アンビル・チルダーズ、ジュリア・ガーナー、ジャック・ゴア、ケリー・マクギリス
配給/トランスフォーマー R18+ 5月10日(土)より新宿武蔵野館にてレイトショーほか全国順次公開 ※新宿武蔵野館では手軽に楽しめる「肉食割引」「超人割引」を実施!
(c)2013 We Are What We Are, LLC.
http://niku-movie.com
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