トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 過剰なスプラッター描写が逆に笑いを誘う! 山田悠介×井口昇『ライヴ』

過剰なスプラッター描写が逆に笑いを誘う! 山田悠介×井口昇『ライヴ』

live.jpg(C)2014『ライヴ』製作委員会

 今週取り上げる最新映画は、人気作家が手がけた話題の小説を映像化した邦画2作品。高校生の淡い恋を描く青春ドラマに、過剰なスプラッター描写が逆に笑いを誘うサバイバルホラーと、趣はまるで異なるが、春らしいフレッシュなキャストと印象的な映像センスという共通点もある(いずれも公開中)。


 『百瀬、こっちを向いて。」は、ももいろクローバーの元メンバーで、ドラマ、CM、PV出演と活躍する女優、早見あかりの初主演映画。新人文学賞を受賞した30歳の小説家・ノボル(向井理)は、母校から講演を依頼されて15年ぶりに帰郷し、当時を回想する。地味で女子と無縁な高校生だったノボルは、ある日先輩の瞬から、ショートヘアで鋭い目つきの美少女・百瀬陽(早見)を紹介される。瞬には本命の彼女・神林徹子(石橋杏奈)がいたが、陰で百瀬とも会っていて、一部でウワサになっていた。ウワサを打ち消すため、瞬はノボルに百瀬と付き合うふりをするよう提案。ノボルと百瀬は、校内で手をつないで歩くなど「ウソの交際」を始める。

 原作は、人気作家の乙一が別名義の中田永一として発表した短編。CMで女性をキュートに撮ることに定評があり、「NO MORE 映画泥棒」の演出でも注目の耶雲哉治が長編監督デビューを飾った。初主演のヒロインに若手の共演陣、演技や演出の未熟さは認められるものの、初々しさが青春の不器用さを思い出させる効果も。大切な人のために本心を抑え、苦悩しながら恋人同士を装う高校生たちだからこそ、説得力たっぷりではない、ぎこちないくらいのたたずまいが似合う。光、影、風が映像に美しくとらえられ、川辺と高圧線鉄塔の郊外の風景にも雰囲気がある。ともあれ、現在19歳の早見あかりの魅力が全開で、おそらく演技面でも精神的にも猛スピードで成長する時期、今後の出演作にも大いに期待したい。

 『ライヴ』は、山田悠介の同名小説を、『片腕マシンガール』「電人ザボーガー」などで国内外にカルト的人気を広げる井口昇監督が映画化。フリーターの直人(山田裕貴)のもとにある日、謎の男から山田悠介の小説「ライヴ」が届けられる。携帯電話には母親が拉致監禁されている動画が届き、「母親を助けたければ、小説の内容をヒントにデスレースのゴールを目指せ」と脅される。直人は、同じように家族や恋人を拉致された人々とレースを開始するが、そこには凶悪な敵と死のトラップが待ち受けていた。

 メインキャストはほかに、『高校デビュー』の大野いと、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の森永悠希。原作本がレース攻略本として劇中に登場するというヒネリは、常識を突き抜けた独創性が海外で高く評価される異能の天才・井口監督ならでは。自主映画から商業映画へと移行する過程で、過激な描写が減る傾向にあるが、今作はメジャー配給作品にもかかわらず、わざとらしい状況やありえない展開が笑いを誘うバイオレンスシーンも満載。知名度は低めだがやたら身体能力の高い脇役たち(特に女優陣)によりバトルシーンもいい感じでハジケている。ストーリーにほとんど関係ない微エロのシーンも、男性観客にはうれしいポイントだ。東京のまちなかで展開する不条理なサバイバルレースを、ライブ中継で観戦する感覚で楽しみたい。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『百瀬、こっちを向いて。』作品情報
<http://eiga.com/movie/78729/>

『ライヴ』作品情報
<http://eiga.com/movie/79996/>

最終更新:2014/05/10 15:00
ページ上部へ戻る

配給映画