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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 懐かしの「覆面レスラーシール」
【バック・トゥ・ザ・80'S】Vol.15

おまけシール全盛期を盛り上げた「ガムラツイスト」「ラーメンばあ」今昔物語!

 この企画に深く関わっていたのが、当時新入社員だった安島まゆみ氏と下條美治氏。そして、桜井氏が拝み倒してスタジオ・メルファンに合流してもらったというデザイナーの山下篤則氏だ。安島氏がシナリオを、下條氏がキャラクターデザイナーを担当し、山下氏、櫻井氏をはじめとするメルファンスタッフたちが着色するという体制の下、「覆面レスラーシール」はスタートした。

 この頃は、ほとんど女子スタッフばかりだったというスタジオ・メルファンだが、もともと永井豪作品や『ベルサイユのばら』など壮大なスケールの漫画が好きだったという安島氏は、アイデアマンだったというA社のスタッフが次々と提案してくるむちゃブリ……もとい、アイデアの素を1本のストーリーに構成。イラストレーター陣はそれを受けて、ドン・ゴッド理事長、ロビン・ゴッド、星若丸、キラー・ジョー、アイ・ガーン大佐など、カッコよくて、どこかコミカルなキャラクターを多数生み出した。

■プロレスから宇宙戦争までを描いた、壮大なストーリー!

 その後、「ラーメンばあ」と「ガムラツイスト」は時間軸、世界観を共有しながらも別々のストーリーを展開するようになる。「ラーメンばあ」は地球上で繰り広げられるレスラーたちの戦いと、長年にわたる因縁の抗争を描く伝奇もの的なシリーズへ。また「ガムラツイスト」は、異星人との宇宙戦争を描くSFへと変貌していく。

 それらをまとめ、シリーズは「レスラー軍団抗争シール」へと発展。ファンはそれぞれのシリーズを追いかけつつ、断片的に開示される情報を元に、2つの物語から構成される壮大な「レスラー軍団抗争シール」の世界に思いをはせていた。

 今にして思えば、少年漫画テイストと大河ドラマ的ロマンを併せ持つ安島氏のシナリオと、少女向け商品のデザインを多く手掛けた桜井氏、彼が三顧の礼で迎えたという山下氏。はたまた、後に『星獣戦隊ギンガマン』『救急戦隊ゴーゴーファイブ』など、特撮ドラマでもキャラクターデザインを手掛けるようにもなる下條氏といった、三者三様の個性を放つイラストレーターのテイストが融合することで、「覆面レスラーシール」──もとい「レスラー軍団抗争シール」は他のおまけシールとは一味もふた味も違う、熱くも懐の深い作風を獲得することができたのかもしれない。

■覇権まであと一歩だった!? 

 そんなストーリー面、キャラクター面で大きな魅力を放っていた「レスラー軍団抗争シール」シリーズだが、登場キャラクターたちの姿を収めたシールそのものにも見どころが多かった。

「当時『レスラー軍団抗争シール』を手掛けていたA社は、常に新しい印刷技術の情報を持っていたので、コスト的な問題がクリアできるとなると、すぐに『これをやってみよう』という話になるんです」

 桜井氏の言葉を裏付けるように、「レスラー軍団抗争シール」シリーズには定番のキラシールのほかに、色鮮やかなホログラムシールや紫外線に反応して絵が浮き出るシール。2枚重ねよりもゴージャスな3枚重ねシールなどなど、弾を追うごとに新技術が惜しげもなく投入されたシールが続々登場し、全国の少年たちの目を楽しませた。

 いわば「レスラー軍団抗争シール」は、日本の最先端のシール技術の実験場でもあったのだ。

 そういった意欲的な挑戦をし続けた結果、「レスラー軍団抗争シール」はぐんぐんと売り上げを伸ばし、最盛期の「ガムラツイスト」の勢いは「ビックリマン」に拮抗するほど。そのおかげで、スタジオ・メルファンはA社から表彰されるほどだったというから、その人気ぶりがいかほどだったかうかがえるだろう(ちなみに「ラーメンばあ」よりも「ガムラツイスト」のほうが、売れ行きは良かったそうだ)。

 ここからは筆者の臆測だが、「ビックリマン 悪魔VS天使シール」は中盤まではギャグ要素とシリアスな要素がバランスよく併存していたが、弾を追うごとに徐々に神話的な色彩を帯びていき、いつしか壮大な叙事詩とでもいうべき世界観に到達してしまった。そのため、序盤の「なんでもあり」なテイストを好んでいた「ビックリマン」ユーザーの中には、団体の離合集散やバトル要素の強いストーリーといった、まさにプロレス的エンタメを最後まで貫いた「レスラー軍団抗争シール」に乗り換えた人もいたのではないだろうか。

 ともあれ、おまけシールを通じてさまざまな物語を体験できた当時の子どもたちは、幸福だったことは紛れもない事実である。

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