デタラメを極める『リバースエッジ大川端探偵社』深夜ドラマの本能
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「マスコミ」という言葉にめっぽう弱く、カネをもらえればすぐに情報を提供してしまう。「人情」ではなく、下世話で「欲望に忠実」な町の側面を浮き彫りにしていく。下町の片隅に覗き部屋があるラブホテルを探し当てた村木たちに、依頼人の女は夫と一緒に見学してほしいと申し出る。そこから実に2分間にわたる濃厚なセックスシーン。女は複数の男たちに身体中を愛撫され、あえいでいる。そんな妻の痴態を「ヒヒヒ」と奇声のような笑い声を上げながら見守る夫。その狂気の世界を、村木たちと共に我々視聴者も覗き見しているような、何かいけないことをしているような感覚に陥ってしまう。と同時に、文字どおり今のテレビにおけるエロの限界への挑戦に度肝を抜かれるのだ。
第1話の「最後の晩餐」では、これまた死期の迫った組長から、昔食べた「喋楽」という店のワンタン麺をもう一度味わいたいという依頼が来る。村木が店の主人を探し出して作らせると、なんの変哲もないワンタン麺。だが、高級な食材で作ったワンタン麺には見向きもしなかった組長がそれを食べて「この味だ!」と興奮しながら満足するのだ。実は「喋楽」のワンタン麺には、うま味調味料がたっぷりと入っていたのだ。組長はその味が忘れられなかった。今は何かと健康志向が叫ばれ、身体に良い食べ物が良しとされている。だが、かつてはうま味調味料まみれの、いかにも身体に悪い食べ物が店に並んでいた。身体に良いものよりも、単純に旨いものが優先されていた。本能に忠実だったのだ。それが、古き良き時代のデタラメさだ。他人のセックスを覗きたいからそういう内装のホテルを作ってしまうような、欲望がむき出しのデタラメさだ。
このドラマは、その人間の欲望のデタラメさを忠実に描いている。だが、単に古き良き時代を懐古しているのではない。否定された価値観を、今の時代に肯定し直しているのだ。そして、今の時代のエロの限界に挑戦したように、深夜ドラマの本能に忠実に、今できるデタラメさを探しているのではないだろうか? うま味調味料をたっぷり入れたような猥雑な味わいで。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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