“爆音”の聖地・吉祥寺バウスシアターが閉館!! さよなら企画「ラストバウス」を5月末まで上映
#映画 #インタビュー
あるのが当たり前だと思っていたものほど、失ったときの喪失感は大きい。吉祥寺のランドマークでもあった映画館バウスシアターが2014年5月いっぱいで閉館するとのニュースが2月に流れ、驚いた人は相当数に上っただろう。1984年にオープンしたバウスシアターはそれだけ吉祥寺という街にしっくり溶け込み、中央線文化を発信する重要な拠点となっていた。ミニシアターながら、シアター1(218席)、シアター2(50席)、シアター3(105席)と3スクリーンを揃え、メジャー大作からインディペンデント作品、名画のリバイバル上映とごっちゃ煮のプログラムで、幅広い層のファンを楽しませてくれた。多目的ホールとして設計されたシアター1での特大スピーカーを使った「爆音映画祭」は、バウス名物として2004年以降すっかり定着していた。シネコンに対抗しうる独自色を発揮していた映画館だけに、閉館の知らせは残念でならない。関係者のコメントをもとに、バウスシアターの存在意義をもう一度考えてみたい。
2014年3月1日付で、バウスシアターの創業者である本田拓夫社長が「建物の経年劣化による大規模修繕の必要性もありながら、近年の市況の厳しさもあり、今後の長期的な展望を見出すことは難しく、誠に残念ではございますが閉館を決定した次第でございます」とホームページ上で閉館を発表した。劇場がいい感じで年季が出てきていたのは確かだが、爆音映画祭など上映作品によっては満席になることも少なくなかっただけに、経営が追い詰められていたようには思えない。バウスシアターで番組編成を担当する武川寛幸さんに、内情を聞いてみた。
武川 「僕がバウスに入社したのは2001年で、ちょうど営業方針が転換した時期でした。2004年に立川にシネマシティ2ができ、2005年にはMOVIX昭島ができ、近辺にシネコンがオープンする度に観客動員数は分かりやすく落ちていったんです。それまでバウスは席数の多いシアター1でメジャー作品を上映し、小さいシアター2でチェコアニメ特集やロシア映画祭などを編成していました。メジャー作品で稼いで、独自プログラムをちょこちょことやっていたんです。そんなとき、みうらじゅんさん原作、田口トモロヲ監督の『アイデン&ティティ』(03)を渋谷シネセゾンとバウスの2館のみで独占ロードショーしたところ、メジャー作品を上映していたシアター1より、『アイデン&ティティ』を上映していたシアター2のほうにお客さんが集まり、スクリーンを入れ替えることにしたんです。その頃から、バウスは独自のプログラムやミニシアター系と呼ばれる作品を積極的に押し出すようになり、この10年間はなんとか生き延びてきたという感じでした。ただ、やはりバウスシアターも開業から30年たち、震災もあって耐震性が問われるようになり、このままでの運営が難しくなったんです。とはいえ、極端に集客が落ち込んでいたわけではないので、僕たちスタッフも残念だし、これからどうしようかと閉館後の身の振り方に悩んでいるところなんです(苦笑)」
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事