ネット騒然!? なんだかミョ~に楽しそうな相撲部屋「式秀部屋」の秘密に迫る
#ネット #インタビュー #大相撲
──ニコニコ動画で公開された、朝稽古前のウォーミングアップ風景も意外でした。まず、リンゴをみんなで食べてからストレッチ。その後、ようやくぶつかり稽古という、ゆったりした雰囲気に驚きのコメントが上がっていました。
親方 これが私の腕です(笑)。うちには毎朝「頭が痛いっす」「やる気が出ないっす」っていうところから始まる現代っ子力士がいるんです。その子は無呼吸症候群で、寝てる時に呼吸が止まっちゃうんですが、そうすると朝起きた時にあんまりすっきりと目覚めることができないわけです。だから、まずうちの部屋ではみんなでリンゴを食べるところから始めます。リンゴというのは一日の始まりにぴったりな、いろいろな栄養分が含まれています。それをまず補給してから、時間をかけてストレッチをします。そのうちに脳がだんだんと目を覚まして、腸の動きも活発になる。そうするとトイレに行きたくなって、大も小も全部出る。それからまわしをつけて稽古を始めると、2時間くらいトイレに行かなくても平気なんですね。結果的に、集中した稽古ができるようになるわけです。
──なるほど!
親方 そうすると、さっきまでやる気がなさそうだった子が、ギラギラした顔つきになってくるわけです。それを見て、今度は「やれちゃうよ!」「できちゃってるよ!」「できる子だよ!」って言ってあげられるわけです。
──実は非常に合理的な考えのもとに、式秀部屋の空気は作られていたんですね。
親方 私見ですが、今の日本の子どもたちの環境って、50年前とは全然違うと思うんです。かつては戦争があり、食べる物があまりないような環境で育ってきた子どもたちは、もともとハングリー精神を持っていたのではないのでしょうか。あらゆる環境が厳しいので、「なにくそ!」という気持ちで結果を出すことができていた。でも今は、そういうハングリーさが必要な環境というのは日本では見られなくなった。少なくとも、食べる物がなくて飢え死にする心配はそうそうない。でも、よくないニュースや社会に対する不安から、子どもたちは漠然としたプレッシャーを受け続けている。そんな今の世代の力士たちに、かつての時代と同じように厳しく接するのは、あまりよろしくないのではないか。ストレスホルモンが出てしまうのではないかと思うわけです。
──「褒めて育てる」のメカニズムですね。
親方 そうです。稽古の一例を挙げると、四股を100回踏むのって大変ですよね。だんだんきつくなってくる。そうすると、人間は同じ動きをしているようで、本来鍛えないといけない筋肉以外を使って負担を逃がそうとするわけです。でも、それは悪い癖の原因にもなります。だから、うちでは1セット10回を数セットやるようにしています。それでもだんだんと体はきつくなってくるわけですが、そこで私が「もう無理するなよ!」「それ以上やると強くなっちゃうよ!」と声をかけると、「もう一回お願いします!」ってみんな頑張っちゃうんですよね。なぜかというと、みんな強くなりたくて力士をやっているからです。
正しい選択肢、やりたい選択肢を与えてあげれば、誰でも自分の力を十分に発揮できるようになる。スポーツで強くなる人というのは、そのスポーツが好きで、自分が練習しようと思えるメニューが勝手に出てくる人です。一方で伸び悩んでいる子というのは、次の選択肢に迷っている子なんです。そこで、弟子たちに次の選択肢を示してあげて、彼らの力をうまくアウトプットさせてあげることが、指導者である私の仕事だと思っています。これがなかなか難しいんですが、褒めて育てるということと選択肢を示してあげるということをかみ合わせることを日々意識しています。
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