「車でオリンピックを」究極のドライバーズバトルレース『インタープロトシリーズ』の世界
同じ車で走ったら、いったい誰がいちばん速いんだ──?
モータースポーツファンなら誰もが一度は考えたことがあるそんな疑問に、真正面から回答が提示されようとしている。
昨年6月、「Driving Competition」をテーマに、レース界の“レジェンド”関谷正徳氏(現SUPER GT トムス監督)が立ち上げた新カテゴリー「インタープロトシリーズ」。日本初の量産型レーシングカーとなる「Kuruma」によるワンメイクレースは、日本のレース界にどんな変化をもたらしてくれるのか。昨年から同シリーズに参戦し、今年は自ら「Team Kurosawa」を立ち上げ、監督兼ドライバーとして開幕を迎えるレーシングドライバー・黒澤琢弥に話を聞いた。
──今年で2年目を迎える「インタープロト」ですが、まずは、どんな車によるどんなレースなのか、簡単に教えてください。
黒澤 自分の先輩である関谷正徳さんが、将来的には車でオリンピックをやりたいということで立ち上げたのが、「インタープロト」です。極力、車の差を出さずに、人間の争い、ドライバーのテクニックの部分でレースをしようと。どうしても、SUPER FORMURAやGTなんかは自動車メーカー主体なんですね。そうすると、GT-Rが速いとかSCが速いとか、車の会話になってしまう。「インタープロト」では、必要最低限の車のレベルさえ揃えて、あとは運転手のバトルを見ようということ。もちろんワンメイクとはいえエンジニアの技術の差は多少出てきますが、そこも車のレギュレーションをあまりセンシティブにしないで、均整を取っていく。ドライバーズレースにしていくということです。
──車はすべて同じ部品ということですか?
黒澤 1つ1つの部品はみんな共通で、ボルト1本までの細かいプラモデルのような状態で、レーシングチームに納品されてきます。それをメカニックが組んで、ドライバーがセットアップして、走って勝負するということですね。
──その1台の車で、プロとアマチュアがそれぞれのレースを走るのも「インタープロト」の特徴ですね。
黒澤 そうですね。「ジェントルマンドライバー」という制度で、アマチュアとプロのドライバーが交替で乗ることになります。1台の車をシェアして、プロは自分のレースもしつつ、ジェントルマンをレッスンして、コーチングしていくという。
──レーシングカーって、アマチュアでも乗れるものですか?
黒澤 もともとそういう設定になっているので、エンジンのパワー的には360馬力くらいで抑えてるんですね。それと、ジェントルマンの方でも壊さずに乗れるように、パドルシフトになってるんです。最近では市販車でもありますが、スタートするときだけクラッチを使って、あとはレバーでアップとダウンをする。そうすると、いわゆるヒール&トゥをしなくていいんです。コンピューターが勝手にブリッピングしてくれるんで。だいたいアマチュアの方が乗って壊すパターンは、無理矢理ギアを入れてギアボックスを壊しちゃうとか、早めにシフトダウンしてエンジンオーバーレブしちゃうとかが多いんですが、このパドルシフトは、いくら早くレバーに触っても、適度な回転、適度な速度じゃないとギアが落ちないんで、壊すことがないんです。
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