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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 話題作の監督が激白
話題騒然のドキュメンタリー映画『アクト・オブ・キリング』の監督が激白!

ホンモノの殺人者たちが演じた戦慄の再現映像!!「彼はアカデミー賞を受賞することを望んでいた」

aok_sc_01.jpg針金を使った殺戮シーンを再現してみせるアンワル・コンゴ。新聞社の屋上で、共産党関係者とおぼしき人物は次々と処刑されていった。

ジョシュア いや、インドネシアでは誰もが知っている公然たる事実です。問題があったとすれば、それは海外での報道の仕方ですね。米国では「グッドニュース」として扱われたんです。NYタイムズやタイム誌などは「西側諸国にとって最高の状態」「アジアで光が差した」という見出しで報道しています。何千人も虐殺され、死体を捨てられた川が血で真っ赤に染まった写真と一緒にですよ。当時の米国はベトナム戦争を積極的に進めた時期で、日本も軍事的ではないにしろ、そのことを支援していましたよね。中国に続いてベトナムが共産化すれば、次はインドネシアが危ない、その次はオーストラリアだと。次々とドミノ式に共産主義が広まることを西側諸国は懸念したわけです。それで明らかな虐殺であるにもかかわらず、「グッドニュース」として報道された。あまりにもナンセンスすぎて、このニュースは西側諸国の人間たちの記憶から忘れ去られてしまったんです。

──1,000人もの市民を虐殺したアンワル・コンゴに出会うまでに40人の殺戮者たちに会ったそうですね。取材しながら恐怖や危険は感じませんでしたか?

ジョシュア あまりにもダークなものに非常に近づいて、しかも長時間一緒に過ごしたんです。身の危険というよりは、精神的なダメージのほうが大きかったですね。それは僕だけでなく、一緒に現場にいたスタッフたち全員に言えることでした。身の危険を感じたのは『アクト・オブ・キリング』で殺戮者たちを取材する前の段階、犠牲者たちの遺族を取材していたときでした。インドネシア軍に撮影機材を奪われ、スタッフが拘束されたりと執拗に妨害を受けたんです。取材に応じた遺族にも危険が及ぶため、それで逆に殺戮者側を取材することに方向転換したわけです。

──アンワルと一緒に殺戮の指揮を執っていたアディ・ズルカドリが途中から撮影に参加するシーンは、観ている側もハラハラしました。「この映画が完成したら、共産党が悪ではなく、我々が残虐だと思われるぞ」とアディは撮影をやめさせようとしますね。

ジョシュア えぇ、確かに危険な状況でした。アディは「監督のジョシュアは実は共産党員じゃないのか?」とみんなに言いだしたんです。このままでは撮影が中断してしまう恐れがあったので、アディに対して「何か問題があるのなら、他の出演者たちにではなく、僕に直接言ってほしい」と頼みました。それで、何とかその場は収まったんです。他にもインドネシア副青年スポーツ相のサヒヤン・アスマラが「政治家としてのイメージが悪くなる恐れがあるから、撮影を一度ストップしてくれ」と言ってきたときは、僕らを一個小隊が取り囲んだ状況でした。このときも危険を感じました。でも、仮に僕が軍に捕らえられて撮影が中止になった場合、僕は国外追放で済んだと思いますが、取材撮影に協力してくれた現地のスタッフたちはもっとひどい目に遭うのではないかと、そのことが心配でした。ハラハラする撮影現場でしたが、僕自身は登山家のような心境だったんです。ロープ一本で高い山を登る際はどのようなルートをたどって山頂を目指すか常に考えますが、あまり下を覗き込みませんよね。ああいう感覚でしたね(笑)。

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