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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.265

フランスからやってきた、超弩級の官能大作! 禁断の恋の行方『アデル、ブルーは熱い色』

adele-blue02.jpgアデル・エグザルコプロスは1993年11月パリ生まれ。ナチュラルな演技に加え、思いっきりのいい脱ぎっぷりも素敵です。

 エマとアデルのベッドシーンが迫力に満ちている。全裸になった2人は貪るように、お互いの体を求め合う。経験豊富なエマが秘蜜のポイントを巧みに責めていく。トマとの初体験では得られなかった快感に身悶えするアデル。さっきまで下になっていたアデルが今度は上になる。複雑に絡み合う2人の体は、まるで2つのジグゾーパズルをごちゃ混ぜにしたかのようだ。ひとつひとつのピースを、お互いの体に埋め合わせていくエマとアデル。2度目のセックスはさらに過激さを増す。お互いの女性器と女性器をズンズンと重ね合わせる肉弾戦が繰り広げられる。汗びっしょりになったエマとアデルは思う。これは運命の恋なのだと。性別を越えた2人の激しい愛し方は、男性から観ても感動的ですらある。

 身も心も結ばれたエマとアデルは、一軒家で一緒に暮らすようになる。エマはアデルをヌードモデルにして情熱的な絵を描き、新進画家として売り出していく。高校を卒業したアデルは教職に就き、エマが画廊のオーナーや芸術家仲間を集めたパーティーを開けばいそいそと料理を準備する。アデルはエマに尽くせることが幸せだった。だが、運命の恋も行き着くところまで行き着けば、後はもう落ちていくしかない。ピークを極めた2人の愛は放物線を描くように徐々に落下していく。エマは展覧会の準備で忙しくなり、アデルは職場に通うだけの淋しい日々を過ごすことになる。あんなに狂おしい愛を知ってしまったアデルは、心の中にすきま風が吹き込むのが耐えられない。

 同性愛という禁断の世界を描いた本作だが、2人の仲を破綻させてしまうのは同性愛に対する世間の冷たい目というよりも2人の生まれ育った境遇の違い。芸術を愛でる裕福な上級社会で育ったエマは「あなたには文才がある。自分の才能を生かすべきよ」とアデルに勧めるが、アデルはエマと一緒に過ごすだけで充分幸せだった。労働者階級育ちのアデルには芸術のことはよく分からない。でも、かつてはあれだけ情熱的な絵を描いていたエマが、プロの画家になってからは世間の流行に迎合した通俗的な作品を描くようになったことは素人のアデルにも分かる。自分が働くから、エマには本当に描きたい絵だけを描き続けてほしかった。でも本音を言うと、絵なんかどうでも良かった。2人でずっと愛し合うことができれば、他には何も要らなかった。

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