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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 内村がコント捧げた芸人の矜持
テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第50回

「やってみよう」内村光良が『LIFE!人生に捧げるコント』に捧げた芸人の矜持

 セリフの練習をしている楽屋のテレビには、次々と刑事ドラマの予告が流れていく。塚本高史の熱血刑事もの、星野源の鑑識もの、西田尚美のインターポールの女刑事もの……。

 さらに「50歳と45歳がタッグを組んで難事件に挑む」という塚地と田中の『独身刑事』。予告には「独身(ひとりみ)しか裁けない悪がある―」というコピーが躍っている。そして、ムロツヨシによる『ニューハーフ刑事』。そんな数々の刑事ドラマの予告を見ながら、もう一度男は台本を見つめる。そのタイトルは『全裸刑事』。内村は一瞬迷いの表情を浮かべながら、「やってみよう」と全裸になるのだった。

 実はこのコント、もともとは『全裸刑事』ではなく、『大家族刑事』だったという。

 撮影時は、まだテレビで流れてくる刑事ドラマの予告はできていなかったので、内村はそれを見ている体(てい)で『大家族刑事』を演じた。ところが、いざ予告ができ上がり、内村のパートとつなげて見ると、『大家族刑事』が『独身刑事』や『ニューハーフ刑事』に「負けている」と感じたのだ。

「仕上がったのを見たら、あまりにも(他が)強烈すぎてこれは『大家族刑事』が霞んじゃう、と。そこで俺が忙しいさなかに考えついたのが『全裸刑事』(笑)。ニューハーフまで行った時に、これを超えるのはなんだろうって考えたのよ。『侍刑事』とか……。でも『全裸』にかなうやつがない(笑)」(内村/スタジオトークより)

 そうして、最初からすべて撮り直したのだ。

 デビュー当時からずっとスタジオコントにこだわり続けた、内村光良のコント職人としての矜持を感じさせる“全裸”だった。

「どうしてその道に足を踏み入れたんだ? お前それで良かったのか? もっと違う選択肢があったんじゃないのか?」

 今、テレビを主戦場にする芸人にとって、コント番組は茨の道だ。もっと楽な選択肢はあるかもしれない。それでも内村は「やってみよう」と、スタジオコントをやり続けた。コントができない時期は、挑戦ものの企画などでキャラクターになりきったりして、擬似コントを演じ続けた。自身にとって『笑う犬』(フジテレビ系)シリーズ以来約9年ぶりとなるコント番組『LIFE!人生に捧げるコント』では、いつしか内村の醸し出す“哀愁”が武器になった。

「今、この年になったからこそ、その味わいが表現できるようになったと思うんです。そういう意味では、これから50代、60代と年齢を重ねていくと新たなキャラクターが生まれるんじゃないかと思っていて。この先、それがすごく楽しみですね」(『NHKウィークリースコラ(2013年8/16・23号)』)

 内村光良は、コントに芸人人生を捧げている。そして、その人生は続いていくのだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)

「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

最終更新:2019/11/29 18:00
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