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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > ひとりの裁判官を丸裸にした『ゼウスの法廷』 司法の矛盾点を、高橋玄監督が白日の下にさらす!
『ポチの告白』のあの監督が、またまた問題作を放った!

ひとりの裁判官を丸裸にした『ゼウスの法廷』 司法の矛盾点を、高橋玄監督が白日の下にさらす!

zeus_noht04.jpg判事の内田(野村宏伸)は司法界の自浄化を目指していたが限界を感じ、弁護士へと転職。恵の国選弁護に就くことに。

■今の日本映画界に必要なのは、東宝インディーズに第二松竹

 高橋監督にもうひとつ訊いておこう。『ポチの告白』は完成から劇場公開まで4年の歳月を要し、『ゼウスの法廷』も2011年の撮影から劇場公開までスムーズには進まなかった。この国の映画事情を、高橋監督はどのように感じているのだろうか?

高橋 『ゼウスの法廷』の公開が遅れた原因は2つ。ひとつは、僕が雇ったプロデューサーが背任行為で製作費を横領したため。これは僕が自力で解決したので、作品の内容には一切関係ありません。もうひとつは、日本の今の二極化した映画界の厳しい現状です。東宝をはじめとしたメジャー系とそれ以外の独立プロによるインディペンデント系との二極化が激しく、企画内容やクオリティーを重視した作品が市場に出回りにくくなっている。完成した『ゼウスの法廷』は東映撮影所の協力もあって撮ったものだしということで、東映さんで配給できないか持ち掛けたんですが、「このキャストだと弱いですね」と言っただけで、東映の取締役クラスは作品を観ようともしなかった。映画を配給する会社の人間が中身も観ずにパッケージで判断して、斬り捨てているわけです。そこで僕が提案したいのは、米国のメジャースタジオであるワーナーにはインディーズを子会社化したニュー・ライン・シネマ、20世紀フォックスにフォックス・サーチライトとそれぞれインディペンデント作品を専門に扱うブランドがあるように、東宝インディーズとか第二松竹といったような子会社か新ブランドを作って、低予算でも良質の作品を配給していくというアイデアです。そうすることで、作品は多様化し、映画文化はもっと豊かになる。さらにはメジャー系の人たちがいちばん望んでいる市場の拡大につながっていくと思います。まぁ、僕がこんな提案しても、あっちの人たちは「ふ~ん」でしょうけど(苦笑)。

 新しいプラットフォームを作ることを高橋監督は提言する。

高橋 大手のシネコンに押されて、ミニシアターや地方の映画館は大変な状況です。貧すれば鈍するで、「東京での人気作であれば上映したい」という地方の映画館が増えている。それでは主客転倒なんですね。中央(東京)の映画をただ持ってくるなら、ますます大きなスクリーンと座り心地のよい客席を用意した駅前のシネコンにお客を奪われていくだけ。先ほども日本は中央に集権化しやすいことに触れましたが、中央に対し、地方は独自の価値観を築いていくことが大切です。中央にはない、その地域だけの独自の文化です。「ジャパネットたかた」はデジタル機器を使って、地方ならではの価値観を生み出した成功例。東京に本社を構える大手家電メーカーが、こぞって佐世保参りしているわけですからね。演劇の世界で言えば、寺山修司やつかこうへいは小劇場というプラットフォームをうまく立ち上げることで成功を収めた。時代の違いというものもあって簡単なことではないけれど、新しい発想によるインフラを構築することが重要だと僕は思います。僕自身で言えば、数年前からNYでハリウッド作品を準備しているところ。予算規模は15億円で、これは僕に声を掛けてきたハリウッドの大物プロデューサーが個人的に決裁できる額。ハリウッドでは高い予算に入らない金額ですが、日本のインディペンデントでずっとやってきた僕には充分な金額です(笑)。米国に活動拠点を作り、新しい作品を生み出せれば、日本の映画界にもいい刺激を与えることができるんじゃないかと思っているんです。

 高橋玄という男から、しばらく目が離せそうにない。
(取材・構成=長野辰次)

『ゼウスの法廷』
監督・脚本/高橋玄 出演/小島聖、野村宏伸、塩谷瞬・椙本滋、川本淳市、宮本大誠、吉野紗香、速水今日子、横内正、黒部進、風祭ゆき、出光元 
配給/GRAND KAFE PICTURES 3月8日(土)よりシネマート六本木ほか全国順次ロードショー 
(c)GRAND KAFE PICTURES 2013 
<http://www.movie-zeus.com>

●たかはし・げん
1965年東京都生まれ。19歳で東映東京撮影所に入り、『心臓抜き』(91)で劇場映画監督デビュー。『CHARON(カロン)』(04)で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭ファンタランド大賞を受賞。『ポチの告白』(05)は完成から4年後の2009年に劇場公開され、ロングランヒット。日本映画館大賞特別賞を受賞し、英国ではDVDがソールドアウト。ベストセラー作家・乙一の代表作の映画化『GOTH』(09)も北米、英国、アジア各国で配給され、高い評価を得ている。現在はNYを拠点にハリウッド作品を準備中。

最終更新:2014/03/05 15:00
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