大島渚『忘れられた皇軍』、自衛官いじめ自殺事件……『NNNドキュメント』が突きつける日本の闇
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「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。
「日本人たちよ、私たちはこれでいいのだろうか? これでいいのだろうか?」
と、あらためて問いただしたドキュメント「反骨のドキュメンタリスト 大島渚『忘れられた皇軍』という衝撃」が大きな話題となった。
放送されたのは2014年1月12日の『NNNドキュメント’14』(日本テレビ系)。これは1963年に同局で放送された大島渚監督のドキュメンタリー『忘れられた皇軍』全編をノーカットで放送し、関係者が当時の制作秘話などを語ったものだ。『忘れられた皇軍』は日本軍として戦いながらも、戦後、韓国籍となったため十分な補償を受けられなかった傷痍軍人たちを追ったものだが、『NNNドキュメント』版では、その韓国籍の傷痍軍人たちに対する日本人の視線が、現代の私たちが持つ“被害者意識”の問題にも通じることを浮き彫りにした秀作で、1月度のギャラクシー賞にも選出された。
『NNNドキュメント』は民法のドキュメンタリー番組の中にあって、最も骨太な作品をコンスタントに放送している番組のひとつだ。2月23日深夜に放送された「自衛隊の闇 不正を暴いた現役自衛官」もそうだ。
これは、海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」で起きた、先輩自衛官からのいじめを苦に1等海士(当時21歳)が自殺した裁判をめぐるドキュメントである。
「お前だけは絶対呪い殺してやる」と、名指しの遺書が残されていたにもかかわらず、自衛隊側は「自殺の原因は、いじめとは断言できない」として遺族と裁判で争った。自衛隊は「調査報告書」を作成するため、隊員にアンケートを実施。しかし、遺族からの情報開示請求に、自衛隊側は「記入済みのアンケートは、調査報告書の完成と同時に廃棄した」と回答をしていた。そして、第一審の判決が下される。自殺の原因が先輩自衛官の暴行によるものであることは認定されたが、一方で自衛隊側に自殺の責任はない、とするものだった。
判決後、まもなく、弁護士に一通の手紙が届く。
「私はかつて、たちかぜ裁判で国側代理人を務めた3等海佐です」と始まった手紙には「防衛省・海上自衛隊はいくつかの文書を原告側に隠しています」と続けられていた。
3等海佐は、自衛隊では幹部クラスに当たる。彼は、代理人を務める中で、アンケートが廃棄されていない事実を知り、何度も自衛隊内部で不正を是正し、事実を公表するよう働きかけている。最初は「公益通報」という、いわゆる内部告発の形で。2度目は、首席法務官への直談判。そして3度目は、人事異動で替わった新たな主席法務官にあらためて直談判した。しかし、いずれも不正がただされることはなかった。これに至り、組織内で手を尽くした3佐は、ついに相手弁護士に手紙を出したのだ。さらに、東京高等裁判所へ22ページに及ぶ陳述書を実名で提出。しかし、自衛隊側は裁判所に対し、なおも誤った事実認識に基づくと主張。ウソつき同然の扱いだった。
3佐が「自衛隊は文書を隠している」と訴えたことを新聞などが報じた日、当直の報告に行くと、上官はその記事を手に話しかけてきたという。3佐は自分を守るために、この時も録音をしていた。
「これお前だよな? なんでこんなことしたの?」と問い詰める上官に「あの、文書を隠していることがずっと心に引っかかってて、正直に出してくれるとずっと期待していたんですけど、どうも最後まで逃げ切る考えのようだったので。私としても苦渋の決断で、こうせざるを得ませんでした」と3佐は答える。
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