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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.260

ハローワークにはない闇ビジネスの就職読本! この世の“生き地獄”をシミュレート『東京難民』

tokyonanmin03.jpg「お金より大事なものがある」と考える修にとって、対立概念であるホストクラブ支配人の篤志(金子ノブアキ)。修のことを「甘い」と突き放す。

 原作小説『東京難民』(光文社)の作者・福澤徹三氏は、『怪談実話 盛り塩のある家』(メディアファクトリー)や『怖い話』(幻冬舎)など実話系ホラー小説を数多く手掛けている作家。飲食業、アパレル、コピーライター、デザイナー、専門学校講師など20以上もの職業に就いたという経歴の持ち主でもある。『東京難民』はホラー作品ではないが、幽霊よりも恐ろしい実在する魑魅魍魎たちが跋扈するリアルな現代社会が描かれる。借金返済のために修に提示される仕事は過酷を極める。覚醒剤の運び屋、臓器売買、さらには保険金殺人……。人の生き血を吸う魑魅魍魎に追い詰められていく修。どこまでも堕ちていく無間地獄のような底なしの恐ろしさに背筋が寒くなる。

 足掻けば足掻くほど、悪循環で社会の底辺へと堕ちていく修。インテリの小早川さんは「椅子取りゲームに僕たちが負けたのは、社会に用意されている椅子が少ないのが原因。僕たちが悪いのではなく、社会が間違っているんだ」と教えてくれた。よく本を読んでいる小早川さんが言うんだから、きっとそうなのだろう。「でも」と修は思う。社会のせいにしていては、自分の置かれている状況は何も変わらないんじゃないのか。結局、修はお人好しな性格が災いして、社会の最底辺であるホームレスにまで堕ちてしまう。すべてを失ってしまった修だが、その表情は妙に清々しい。学生の頃はまるで知らなかった世界を体験し、いろんな人たちと本音で関わるようになった。社会の最底辺にまで降りた修の瞳には、今までとは違った東京の風景が広がっていた。2時間10分の地獄めぐりを体感した後、修の生き方をあなたはどう感じるだろうか?
(文=長野辰次)

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『東京難民』
原作/福澤徹三 脚本/青島武 監督/佐々部清 出演/中村蒼、大塚千弘、青柳翔、山本美月、中尾明慶、金井勇太、落合モトキ、田村三郎、大谷ノブ彦、吹越満、福士誠治、津田寛治、小市慢太郎、金子ノブアキ、井上順 R15+ 配給/ファントム・フィルム 2月22日(土)より有楽町スバル座ほか全国ロードショー (c)2014「東京難民」製作委員会 
http://tokyo-nanmin.com

最終更新:2014/02/21 19:30
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