SMマニアとSF愛好家との深くて親密なる関係性、壇蜜主演の特撮コメディ『地球防衛未亡人』
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『地球防衛未亡人』は、ラクウェル・ウェルチ主演『女ガンマン 復讐のメロディ』(71)、ユマ・サーマン主演『キル・ビル』(03、04)と同じく、復讐に燃える女の物語だ。今回の壇蜜はボンテージファッションではなく、『ウルトラマン』の科学特捜隊を思わせるオレンジ色の隊員スーツをキリッと着こなす。地球防衛軍に中途採用されたダン隊員(壇蜜)にはかつて最愛の婚約者がいた。向島で芸者をしていたダンだが、婚約者とは結婚式までは清い関係でいようと約束を交わしていた。そんな矢先、宇宙怪獣ベムラスが東京に現われ、婚約者はあっけなく踏み潰されてしまう。私の初夜を返して! 処女のまま未亡人となったダンは復讐を誓い、地球防衛軍に入隊。血の滲むような努力の末にエースパイロットとなっていた。そしてヤツが再び現われた。ベムラスは日中間の領土問題で揺れる東シナ海の孤島に出現、さらに日本列島に上陸し、核廃棄物が山積みされた原発へと迫る。ついにダン隊員が搭乗する最新戦闘機に出撃命令が下る。未亡人と怪獣との戦いの火ぶたが切って落とされた。
的確なミサイル攻撃で怪獣を追い詰めるダン隊員だったが、そんなとき彼女の体に異変が起きる。怪獣を攻撃する度にダンの全身をかつてない快感が貫く。コクピット内でハァハァしてしまうダン。思わぬ醜態を晒してしまい、戦闘機はあえなく撃墜。一命は取り留めたダンだったが、こっそり受けた精神科医(モト冬樹)の分析結果にさらなるショックを受ける。「あなたは立派な変態です」。婚約者の仇を討つために地球防衛軍に入ったのに、そんな自分がただの変態だったなんて。精神科医の投げ掛けた言葉がダンの脳内にエコーする。「あなたは変態です」「あなたは変態です」「あなたは変態です」。
ダン隊員が精神分析を受けるこのシーンは、三島由紀夫の小説『音楽』が元ネタだと河崎監督は語る。増村保造監督によって映画化もされている『音楽』は、「音楽が聴こえない(音楽=エクスタシーの暗喩)」と訴えてきた美女を精神科医がカウンセリングを重ねることで「音楽が聴こえる」ようになるまでを描いた官能系ミステリー小説だ。社会風刺、未亡人、喪服、深層心理、三島文学……。壇蜜というセクシーアイコンを手に入れた河崎監督の痴性溢れる遊び心がまんべんなく施されている。
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