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SF大作『スノーピアサー』公開記念インタビュー

ポン・ジュノ監督が宮崎アニメについて語った!「SFとアニメは作家のメッセージが最も発露する」

snow_p02.jpgアジアの名優ソン・ガンホら国際色豊かなキャストが集まった『スノーピアサー』。ティルダ・スウィントンは特殊メイクで顔が分からない!

ポン おっしゃる通り、韓国と日本が正式に文化交流を始めたのは98年になってからです。不思議に思うかもしれませんが、韓国でも日本のアニメ作品を幅広く視聴することができました。大人向けの番組と違ってアニメ作品は子ども向けだということで、韓国のテレビで普通に放映されていたんです。ですから僕らの世代は、みんな日本製アニメを観て育ちました(笑)。『マジンガーZ』『グレンダイザー』『グロイザーX』『新造人間キャシャーン』……いろんなアニメ作品を観てきました。でも、子どもだった僕らは、自分たちが観ているアニメが日本製だとは知らなかったんです。『宇宙戦艦ヤマト』は『空飛ぶ戦艦V号』という題名で放映されていましたし、主人公が着物姿になっているシーンなどは編集されていましたからね。いわば国籍不明の世界を、少年時代の僕らは楽しんでいたんです。

──国籍不明の世界ですか。どこかスノーピアサー号の世界とつながっているように感じます。そのスノーピアサー号ですが、環境破壊、食料問題、人口問題、経済格差など現代社会が抱える歪みのすべてが列車の中に詰め込まれています。諸問題を抱えながらもシステムが回り続けることで辛うじて均衡を保っている状況は、現代のグローバル社会そのものですね。

ポン (うなずきながら)ずっと走り続けなくてはならない、一度も止まることが許されない、これは大変な恐怖でしょう。スノーピアサー号の乗客たちは「列車が止まったら終わりだ」「列車の外の世界は死が待っている」と洗脳されてしまっているんです。スノーピアサー号で生まれた子どもたちは、車両教室でそのことを小さいときから教えられ続けているんです。実際に外の世界に出たら死ぬのかどうかは誰も確かめていないのに、「列車は走り続けなくてはならない」と思い込んでしまっている。この状況は、私たちが生きている現代社会そのものです。私たちは社会という名のシステムの中で暮らしていますが、その社会がずっと続き、その社会の中の付属品のように生きざるを得ないかのように思い込んでしまっています。でも過去の人類の歴史を振り返ると、古いシステムが新しいシステムに取り代わり続ける連続だったはずです。今のシステムが本当に正しいものなのかどうか、主人公たちは自分の目で確かめようとする。SF映画だからこそ描くことができた世界だといえるでしょうね。

■ポン・ジュノ監督が作品を量産できない理由

──『キャプテン・アメリカ』(11)のクリス・エヴァンス、『ナルニア国物語』(05)のティルダ・スウィントンといったハリウッドスターは、濃厚なメイクで素顔が分からない。また、撮影はチェコのスタジオで行われたそうですね。ハリウッド映画でもなく、かといって韓国映画でもない、無国籍映画として『スノーピアサー』は完成したように思います。

ポン 米国で技術試写をしたんですが、上映が始まって20分が過ぎた頃に「どうして主人公のクリス・エヴァンスが、まだ登場しないんだ?」と言いだした映写技師がいたんです。クリスが最初からずっと出ていることに、彼は気づかなかったそうです(笑)。クリスはニット帽をかぶり、ヒゲ面で顔が真っ黒ですからね。主人公のクリスが分からなかったぐらいですから、特殊メイクしているティルダはもう言わずもがなですよ(笑)。ティルダが演じた総理役のメイソンのモデルはいろんなイメージを複合させたものですが、実在した人物でいえば英国首相だったマーガレット・サッチャーです。ティルダはメイソン役にノリノリで、わざわざサッチャーが生まれたヨークシャー地方のアクセントで台詞を話したいと提案してきました。韓国でいえば慶尚道風のなまり、日本なら関西弁といった感じでしょうか。実はメイソン役には、『コナン』の登場人物であるモンスリーとダイスのイメージも盛り込んでいるんです(笑)。

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