ファン感涙のリバイバル──矢沢永吉「時間よ止まれ」が70年代に成し遂げた偉業とは
#矢沢永吉
1978年に資生堂CMソングに起用された、ロック歌手・矢沢永吉の往年のヒット曲「時間よ止まれ」が、36年の時を経て、再び同社のCM曲として復活するという。昨年5月に発表された『ALL TIME BEST ALBUM』がオリコンアルバムランキング最年長(63歳8カ月)での首位を獲得するなど、64歳と還暦をすぎてなお意気軒高の永ちゃん。今回のCMソング復活は、当時からのファンにとっては“感涙もの”だろう。
「『時間よ止まれ』は78年3月に発売され、資生堂のCMソングに起用されたこともあり、オリコン1位を獲得、ミリオンセラーを記録しました。年間チャートでも9位を記録。現在では考えられないですが、当時はまだロックという音楽ジャンル自体が日本に根づいておらず、永ちゃんのようなバリバリのロッカーの曲が大ヒットするなんて極めて異例のことだったんです。また、ロックミュージックを自社のCMソングに起用した資生堂の英断も大きかった」(音楽ライター)
ちなみに78年のオリコン年間チャートを見ると、1~3位を「UFO」「サウスポー」「モンスター」と当時人気絶頂だったピンク・レディーが占めている。そこに続くのが「君のひとみは10000ボルト」(4位・堀内孝雄)、「微笑がえし」(5位・キャンディーズ)。6位には、再びピンク・レディーの「透明人間」。7位が「カナダからの手紙」(平尾昌晃・畑中葉子)、8位には「Mr.サマータイム」(サーカス)。そして9位が矢沢で、10位が中島みゆきの「わかれうた」といった具合。ニューミュージックや歌謡曲が全盛だった当時の音楽シーンで、矢沢の大ヒットが、いかに異例だったかわかろうというものだろう。
「そもそも当時、ロックというジャンルはライブの動員はすごいけれど、レコード、特にシングル盤は売れないというのが定説でした。つまり、ロックはまだまだアンダーグラウンドなジャンルだったわけです。そんな中で、『時間よ止まれ』の大ヒットは定説を覆し、若者限定の人気にすぎなかったロックという音楽と矢沢永吉というロッカーを、お茶の間に広く知らしめる役割を果たしました。当時は歌番組も全盛で、『ザ・ベストテン』(TBS系)が高視聴率を誇っていました。しかし、ロックやニューミュージックのアーティストは商業主義のテレビには出演しないというのが基本的なスタンスで、ご多分に漏れず永ちゃんも『ザ・ベストテン』にランクインしても一切出演しませんでしたね。まあ、テレビに出なくても、CMで曲がバンバン流れていたわけですから、プロモーションには全く支障はなかったわけですが(笑)」(同)
前述の年間トップ10にランクインしている歌手やアーティストは、多くが矢沢よりも年下。にもかかわらず、いまだに音楽チャートの上位にランクインするなど、第一線で活躍しているのは矢沢ぐらいなもの。還暦をすぎてもその現役ぶりには恐れ入るが、今回のCMソング復活は、そんな矢沢の偉大さを再認識させるものといえるかもしれない。
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