『明日、ママがいない』に見る、子役たちの生きる道
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「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。
「あのババア、過保護すぎて頭おかしいんだよ。知ってる? 娘の名前。“月の姫”って書いて『かぐや』って言うらしいよ。DQNだよ、DQN!」
そう言って、グループホーム「コガモの家」で暮らす子どもたちは笑った。
『明日、ママがいない』(日本テレビ系)は、さまざまな事情で親と離れて暮らすことになった「ワケありの子が連れてこられる」グループホーム「コガモの家」を舞台にした物語だ。ここでは、それぞれをあだ名で呼び合う。このドラマでは「名前」あるいは「呼び名」が重要な意味を持つモチーフとして使われている。
ピアノが得意な「ピア美」(桜田ひより)、貧乏だからこの施設に預けられた「ボンビ」(渡邉このみ)、そして赤ちゃんポストに預けられていた「ポスト」(芦田愛菜)。彼女たちがあだ名で呼び合うのには、ちゃんと理由がある。親からほぼ唯一もらったものである名前を自らの意思で捨て、自分で選んだ名前を名乗っているのだ。
主人公のひとりである真希(鈴木梨央)は、母親が恋人を鈍器で殴り、傷害事件を起こしたことがきっかけで入所。入所後、ポストたちに「ドンキ」とあだ名を付けられたが、それを受け入れられないのはもちろん、裕福な里親に引き取られ、幸せになりたいと願う彼女たちの言動にも反発していた。
このドラマの最大の魅力は、なんといっても当代の天才子役、芦田愛菜と鈴木梨央の共演だろう。鈴木はNHK大河ドラマ『八重の桜』で八重の幼少期を演じ注目を浴び、『Woman』(日本テレビ系)でメインキャストとして活躍した。そんな彼女が芸能活動を始めたのは『Mother』(同)で芦田の演技を見て「愛菜ちゃんみたいになりたい」と思ったのがきっかけだ。その芦田については、もはや説明不要だろう。彼女の子役としての完成度は、子どもらしからぬ完璧な演技や振る舞いからネット上などでは「芦田先輩」「芦田プロ」などと呼ばれ、有吉弘行からも「子どもの皮をかぶった子ども」とあだ名を付けられているほどだ。ポストは、芦田が演技がうますぎるゆえ、とても子どもには見えないという子役特有の矛盾を逆手に取ったような、大人びたキャラクターだ。
「よし、泣け!」
グループホームの施設長で「魔王」と呼ばれる佐々木(三上博史)は、朝食を前に子どもたちにそう言い放つ。
「どうした、芸のひとつもできないのか? そんなことじゃ、もらい手はつかんぞ。ここにいるお前たちは、ペットショップの犬と同じだ。ペットの幸せは飼い主で決まる。飼い主はペットをどうやって決める? “かわいげ”で決める。時に心を癒やすようにかわいらしく笑い、時に庇護欲をそそるように泣く。初対面の大人を睨みつけるようなペットなんて、誰ももらってはくれない。犬だって『お手』ぐらいの芸はできる。分かったら泣け。泣いたやつから食っていい」
もちろん、現実にそんな暴言を吐く施設長がいれば、それは虐待だ。だが、フィクションである以上、デフォルメし象徴的に描くのは珍しいことではないし、それが効果的であれば非現実的なものこそが現実をえぐることだってある。
うまく泣くことができない子どもたちを前に、魔王はポストに「見本を見せてやれ」と命じると、芦田演じるポストは「いくら?」と問いながらも、すぐにかわいらしく涙を流すのだ。魔王の言葉は里親と子どもとの関係性にとどまらず、子役と視聴者との関係にも通じるものだ。
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