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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.253

人生観さえ一変させる遅効性のドンデン返し!! 贋作に残した愛の証『鑑定士と顔のない依頼人』

kanteishito03.jpgヴァージルに恋愛指南する修理工のロバート(ジム・スタージェス)。屋敷に残されていた部品から“からくり人形”を再現してみせる。

 ミステリー好きな人なら、本作のクライマックスに用意された大ドンデン返しは、ある程度予測できたに違いない。だが、本作の魅力はネタバレによって損なわれるものではないし、劇場では2回目以降は1000円で鑑賞できるリピーター割引キャンペーンを行なっている。絵画と同じで、観た人によって、また観る度に本作の印象はまるで違ったものに感じられる。さらに言えば、これまでバッドエンドムービーだと思い込んでいた作品も実は違った一面を持っていたのではないか、ハッピーエンドだと受け止めていた作品もそんな安直なラストではなかったのではないかという想いがもたげてくる。これまで自分が観てきたあらゆる映画の印象さえも、まるでオセロゲームのように一気に塗り変わってしまいかねない。それほど深い余韻をもたらす、二重のドンデン返しとなっている。一度目は劇中で、そして二度目は観た者の脳内で起きるドンデン返しだ。

 ラストシーンの意味を咀嚼し、自分の体内での消化が進むにつれ、本作のドンデン返しは映画の解釈だけに留まらないことにも気づかされる。自分の心の中に古傷として残っている苦い恋愛体験さえも、愛おしく感じられるようになるのではないだろうか。サイアクな別れ方をしてしまった封印したい記憶だとしても、それは自分が生きてきた証でもあるのだと。「すべての偽りには本物が隠されている」という劇中の台詞がずっと口の中で溶けずに転がり続ける。映画という虚構の中でしか描けない真実が、だまし絵のようにこの映画には潜んでいる。
(文=長野辰次)

kanteishito04.jpg

『鑑定士と顔のない依頼人』
監督・脚本/ジュゼッペ・トルナトーレ 音楽/エンニオ・モリコーネ 出演/ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・ホークス、ドナルド・サザーランドほか 配給/ギャガ 12月13日よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開中 PG12
(c)2012 Paco Cinematografica srl.
http://kanteishi.gaga.ne.jp

最終更新:2013/12/27 18:00
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