テレビウォッチャー・てれびのスキマが選ぶ、2013年のテレビ事件簿【ドラマ編】
#テレビ #ドラマ #あまちゃん #半沢直樹 #てれびのスキマ
■『あまちゃん』『ごちそうさん』 朝ドラ当たり年
傑作ドラマが多かった13年、その中でも突出していたのが『あまちゃん』だった。宮藤官九郎の脚本を井上剛、吉田照幸らが演出し、能年玲奈、橋本愛、小泉今日子らが演じたこの作品は多くの人を虜にし、語り合わずにはいられないドラマになった。かつて学校や会社で人が集まれば、「昨日あれ見た?」とテレビ番組の話題になるのが日常の風景だった。そんな見慣れた風景が失われて久しかった。だが、『あまちゃん』が始まってからというもの、人と顔を合わせれば「『あまちゃん』見た?」という会話をすることが多くなった。『あまちゃん』は日本の共通言語となったのだ。その話題も物語の行方はもちろん、役者の魅力や劇中アイドルたちの歌、モチーフにされた80年代カルチャー、そしてクドカンドラマの真骨頂とも言える小ネタの数々と多岐にわたり、果ては役者たちの今後までをみんなで心配する始末。「あまロス」などという言葉も生まれ、その後、数多くの関連番組も作られた。間違いなく13年を代表するドラマであると同時に、朝ドラ史、テレビドラマ史の中でも、これまでのテレビドラマを総括するような重要な作品のひとつであるといえるだろう。
そんな傑作の後で苦戦が予想された『ごちそうさん』は、それをいい意味で裏切り、視聴率でいえば『あまちゃん』を上回る好調っぷり。昔の「少女マンガ」のような展開と明るいノリだった「東京」編から「大阪」編に移ると、そのヒロインの明るさや前向きさの毒性という重いテーマを軽いタッチそのままに描く離れ業。
2本とも、毎週1時間という一般的な連ドラよりも毎日15分という現代の視聴習慣には合致しやすい朝ドラの優位性を活かした作りで成功している。13年は朝ドラの当たり年でもあったのだ。
■総括~『あまちゃん』世代台頭で新時代へ~
上に挙げたもの以外でも、『ダンダリン 労働基準監督官』(日本テレビ系)、『信長のシェフ』(テレビ朝日系)、『名もなき毒』『刑事のまなざし』(以上、TBS系)、『家族ゲーム』『天国の恋』(以上、フジテレビ系)や、深夜ドラマも『裁判長っ!おなか空きました!』(日本テレビ系)、『放課後グルーヴ』(TBS系)、『終電ごはん』『まほろ駅前番外地』(以上、テレビ東京系)など、個性的で印象深い作品が多かった。
また特筆すべきは、NHKの単発ドラマ『特集ドラマ「ラジオ」』。震災後の女川を舞台に実在の女川さいがいFMを描いたドラマで、刈谷友衣子が主演し、繊細で瑞々しい演技が光った。思えば、刈谷は『あまちゃん』の能年や橋本と同世代。3人は10年の映画『告白』でクラスメイトとして共演している。この世代の役者が今後、ドラマでさらなる活躍をしていくはずだ。テレビドラマが新たな時代に突入することを予言するような新世代の台頭だ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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