「やっぱり、“こっち側”?」堀北真希が声優を目指すアニヲタ女子を好演!『麦子さんと』
#堀北真希
今週紹介する最新映画は、堀北真希主演のハートウォーミングな母子のドラマと、冒険レースを繰り広げる飛行機が主人公のディズニーアニメ。日ごと寒さが深まるこの時期、ぜひ好みの作品で心から温まって、あるいはアツく盛り上がっていただきたい。
『麦子さんと』は、『純喫茶磯辺』(08)の吉田恵輔監督が実体験もまじえながら、長く離れて暮らしていた母と娘の関係と愛情を描いたオリジナル作品。声優を目指すアニヲタ女子・麦子(堀北)は、パチンコ店で働く無責任な兄・憲男(松田龍平)と2人暮らし。ある日、兄妹が幼い頃に家を出たまま音信不通だった母親の彩子(余貴美子)が突然現れ、同居することに。麦子は母を許せず心ない言葉を投げつけるが、重い病を隠していた彩子はほどなく他界。納骨のため母の田舎を訪れた麦子は、若い頃の彩子とそっくりな外見から町の人々に歓迎され、それまで知らなかった母の人生に触れる。
心を閉ざし生前の母につらく当たってしまった麦子が、町の人々と触れ合い彩子の思い出を聞くうちに、母の愛情を知り自らも精神的に成長する様子を、堀北が抑えた演技で繊細に表現。仏頂面のままアニメ声でキャラのセリフをそらんじるシーンや、ダメ兄を演じる松田とのやりとりも楽しい。アイドル歌手を夢見て田舎を飛び出した母、母と反発していた娘の和解の物語といえば、今年大きな話題になったNHK朝ドラ『あまちゃん』を思わせるが、実は吉田監督が8年越しで構想してきた企画。自身が迷惑をかけた母と死別し、感謝を伝えられなかった体験も、確かに作品に投影されている。随所でくすくすと笑えて、いつの間にか自らの肉親を思って涙ぐんでしまうような好作だ。
もう1本の『プレーンズ』(2D/3D上映)は、ピクサーの人気アニメ『カーズ』(06)の世界観から生まれた、意志を持つ飛行機が空の冒険を繰り広げるCGアニメーション作品。田舎の農場で働く農薬散布機のダスティは、世界最速のレーサーを夢見ているが、現実には高所恐怖症のため低空飛行しかできない。それでも夢をあきらめきれず、仲間の応援も受けて世界一周レースへの出場を果たす。最新鋭の飛行機たちに性能で劣りながらも、各ステージでアクロバット飛行を駆使し、最下位から徐々に順位を上げていくダスティ。だが、インドからスタートしたステージで、目前に世界最高峰のヒマラヤ山脈が立ちはだかる。
ピクサーアニメの立役者、ジョン・ラセターが自ら監督した『カーズ』と共通するのは、人間が存在しない代わりに、自動車や飛行機などの乗り物が意志を持ち、レースや冒険に挑戦する世界。ピクサーがディズニーの子会社になり、ラセターもいまやディズニーアニメの幹部に出世したことで実現した企画だが、ディズニーが制作したことでよりウェルメイドになった反面、ピクサーらしい脚本の独特なクセが弱まった感も。とはいえ、3Dで見る空中のアクロバットシーンや米空母上での場面などはリアルかつ迫力満点だし、擬人化された乗り物キャラに素直に感情移入できるなら、童心に帰ってスリリングな空の冒険の旅を楽しめるはずだ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『麦子さんと』作品情報
<http://eiga.com/movie/78246/>
『プレーンズ』作品情報
<http://eiga.com/movie/77782/>
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