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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > “アングラマネー”の秘密

裏総合商社、売春の相場、末端価格……“アングラマネー”の秘密を解きほぐす『図解 裏ビジネスのカラクリ』

 図解の中に盛り込まれている、裏ビジネスの相場価格表も本書のポイントだろう。密造銃の種別価格や各種ドラッグの末端価格まで、数値として示されるから、そのビジネスの規模や客単価の相場も見当がつきやすい。これらの数字も、非合法ビジネスの悪質性を強調するためではなく、あくまで解説のための資料として載せられているのがこの本の特徴である。

 売春の年齢別の基本価格からオプション価格までがわかりやすく載せられた項目には、素人が簡易的に売春に参入しやすくなったために「市場」が荒らされ、管理買春がその立場を脅かされている現状が解説される。こうやって紹介されると、表社会と何一つ変わらないような、裏ビジネスの商業としてのダイナミズムや悲哀がうかがえるようで面白い。

 もっとも、人身売買のしくみや人体売買のパーツごとの相場価格までが同様に解説されるくだりなどを読むと、その明快さゆえに静かな怖さにも触れることになる。簡潔にメソッドが解説できるほどにマニュアル化されているということは、我々の住んでいる社会を一枚めくれば、そこにはこうした裏のビジネスシステムが張り巡らされているということの証しでもある。「表」に見えていないだけのことなのだ。

 本書ではまだ記憶に新しい近年の凶悪事件についても、その背後にある裏ビジネスの組織や、裏ビジネスのどのようなメソッドがそこに息づいていたのかを説明してくれる。北九州や尼崎の監禁殺人事件で、首謀者が駆使していた裏ビジネスに必須のスキルとはどのようなものか。六本木のクラブ「フラワー」での撲殺事件でニュースにもたびたび取り上げられた関東連合とは、いかなるつながりで形成された集団なのか。ニュースを流し見していては一件一件の事件でしかないものが、裏ビジネスのシステムという補助線を引くことで立体的に見えてくる。ニュースの背後をいかにして考えていくかの一助にもなるだろう。

 次々と新手の方法があらわれる詐欺の手口や、いつの世も絶えない“下半身”つまり性欲をめぐるビジネスなど、非合法ビジネスを広範に解説している本書は、アンダーグラウンドの住人たちの興味深さとそら恐ろしさを同時に伝えるものになっている。付け加えて言うならば、この手広い裏ビジネス解説書は、裏を返せばそのようなアンダーグラウンドの犠牲者にならないための対策マニュアルにもなるのだ。なにしろ、我々の住んでいるこの世界は、ちょっとひっくり返せば周到にマニュアル化された闇にあふれているのだから。
(取材・構成=香月孝史/http://katzki.blog65.fc2.com/

最終更新:2013/12/11 18:00
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