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日刊サイゾー トップ > 社会  > 脱法シェアハウス規制に賛否

『あさイチ』でも賛否沸騰! 脱法シェアハウス規制は貧困層を救うのか?

 ところが今回、国土交通省が規制に乗り出したことで、せっかく新たな居場所を見つけたネカフェ難民たちが、再びそれを失いかねない危機に直面している。いや、住居を追われるのは、劣悪な脱法ハウス住民ばかりではない。方針通りに寄宿舎の基準が適用された場合、ごく一般的な物件も含めたシェアハウスの8割以上が不適合と判断され、1万人以上の居住者が追い出される可能性があるという。

 今年6月、シェアハウスやネットカフェを経営する運営会社が消防法違反を指摘された施設の利用者に対し説明もなく退去勧告を出し、抗議した利用者側ともめ、最終的には利用者数名が東京地裁へ退去差し止めの仮処分申請を行うという騒動があった。

 国民の住まいを守る全国連絡会の坂庭国晴代表幹事は「国が脱法ハウスの実態調査を進めれば、違反を指摘されて施設を閉鎖する業者が続出しかねない。放置しておくと、大変な社会問題になる」と懸念を語っている。

 そもそも、今回、脱法シェアハウスが問題化したのは、シェアハウス居住者の安全確保だけが目的とは思えない。

「近隣住民からの苦情も大きいでしょう。住宅地の中の一戸建てやマンションの一室に突然、シェアハウスができて多くの居住者が住むようになったことで、近隣の住民から『知らない人が出入りしていて不安』『火事や事件が起きたらどうするんだ』『資産価値が下がってしまう』という声が出て、トラブルが頻発。裁判沙汰にも発展するようになった。そんな中、国土交通省が規制に乗り出し、世論の地ならしキャンペーンとしてマスコミ報道が始まったという構図です」(全国紙社会部記者)

 そういう意味では、今回の脱法ハウス問題は「異物排除」という最近の日本社会の風潮がもたらしたともいえるだろう。

 貧困問題の専門家である阿部彩氏は『弱者の居場所がない社会』(講談社現代新書)の中で、人が社会で生きる上で最も重要なのは社会に包摂されることであり、そのためには「つながり」と「役割」と「居場所」が必要だと指摘している。

 だが、現実は逆だ。貧富の差は拡大し、職を追われた弱者は単に経済的困窮に陥るだけでなく、社会で必要とされる「役割」や人との「つながり」をすべてなくしてしまう。そしてわずかに見つけ出した「居場所」にまで、いつのまにか法規制の網がかけられていく。

 もちろん、脱法ハウスをこのまま放置していいわけではない。明らかな消防法違反や建築法違反の施設は、住人の安全に関わる大きな欠陥を抱えているのも事実だ。だが、一方的な規制で施設を閉鎖に追い込んだり、その危険性を業者や住人の自己責任に帰するのはあまりに的外れな対応と言わざるを得ない。

 早くからこの問題に関心を持っていた、ブロガーのイケダハヤト氏はこう指摘している。

「ぼくらの大部分は、住まいの確保にまつわる問題に関して、『国のせい』にするという発想が乏しすぎるのです」(脱法・違法ハウス問題に思う住まいの問題は「自己責任」ではない)

 そう。憲法で保障されている生活権のベースになっている住環境の整備は、本来、国の責任なのだ。私たちが今、行政に要求すべきなのは取り締まりでなく、シェアハウス安全整備への積極的支援ではないか。少なくとも、巨大な公共住宅の建設などよりはるかに低予算で、効率的だと思うのだが……。
(文=和田実)

最終更新:2013/12/03 12:00
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