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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.248

美少女として生まれし者の恍惚と不安、ここにあり エマ・ワトソンの輝きを記録『ウォールフラワー』

wallflower03.jpgパトリック(エズラ・ミラー)の運転で真夜中のドライブへ。彼らにとって、この3人でいるときがいちばんハッピーな時間だった。

 原作者であるスティーブン・チョボスキー監督自身の手によって映画化された本作。物語の設定は1991年だが、田舎の高校が舞台ということもあり、80年代の色合いが強い。チャーリーもサムも80年代に活躍したUKバンド、ザ・スミスが大のお気に入りで、リバイバルブームに沸いたホラーミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』(75)のコスプレ上映会に嬉々として参加する。仏教徒でパンクスのメアリー(メイ・ホイットマン)らと一緒になって、映画マニア向けのミニコミ誌づくりに熱中する。UKロック、カルトムービー、ミニコミ誌……。学内の主流派にはなれない、いや主流派になることにまるで興味がない、はみだし者たち文化系の青春が鮮やかに描かれていく。

 ヒロインであるサム役に英国人エマ・ワトソンを起用したチョボスキー監督は、エマ・ワトソンの中に孤独な影を感じていたそうだ。美少女は美しければ美しいほど孤独に映る。チョボスキー監督の故郷であるピッツバーグ郊外で撮影は行なわれ、本作のハイライトともいえる車から上半身を乗り出してのドライブシーンの撮影中、エマ・ワトソンは泣き出してしまった。「両手を挙げていたら、気持ちが高ぶっちゃって。間違いなく、あれは私の人生の中で最高の瞬間のひとつだったわ」と振り返るエマ・ワトソン。彼女自身、『ウォールフラワー』の撮影時に人生のあるピークに自分が達していることを悟っていた。

 映画とは過去を振り返る表現に他ならない。そこにはすでに失われてしまった美しさが刻まれ、どうしようもない哀しみやはかなさが伴う。その宿命を背負う覚悟がある者だけが、美少女として輝くことができるのだ。『ウォールフラワー』の中のエマ・ワトソンは、泣きたくなるほど美しい。
(文=長野辰次)

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『ウォールフラワー』
原作・脚本・監督/スティーブン・チョボスキー 出演/ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラー、メイ・ホイットマン、ケイト・ウォルシュ、ディラン・マクダーモット、メラニー・リンスキー、ニーナ・ドブレフ、ジョニー・シモンズ、ジョーン・キューザック、ポール・ラッド 
配給/ギャガ 11月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開 
(c)2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
<http://wallflower.gaga.ne.jp>

最終更新:2013/11/21 21:00
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