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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.248

美少女として生まれし者の恍惚と不安、ここにあり エマ・ワトソンの輝きを記録『ウォールフラワー』

wallflower02.jpg学内でどこにも所属できずにいるチャーリー(ローガン・ラーマン)。サムたちに出会うまではスクールカーストの底辺をさまよっていた。

 年上の女性・サムは、チャーリーにとって眩しすぎる存在。ダンスパーティーではデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの83年の大ヒット曲「カモン・アイリーン」をBGMに弾けたダンスを披露する。パーティー後の深夜ドライブでは、車から上半身を乗り出してショートヘアをなびかせた姿が神々しい。そしてクリスマスには作家志望のチャーリーのためにタイプライターを用意しただけでなく、特別な贈り物を2人っきりのときにこっそりプレゼントしてくれる。サムにリードされ、チャーリーは大人の階段を一歩ずつ上がっていく。スクールカーストなどに縛られない自由なサムたちに感化されたチャーリーは、今ではキング・オブ・ウォールフラワーとして堂々と咲き誇っていた。

 義兄のパトリックとは別に、いつもワイルド系の恋人を侍らせているサム。でも年下のチャーリーには格別に優しい。どうしてサムはチャーリーに親切なのだろうか? サムは自分の美しさを知っている。それが傲慢に感じられないほど、彼女は完璧に美しい。だが、その美しさは永遠に続かないことも彼女は承知している。美少女とは、生命のはかなさと創造主である神の残酷さを知る美しい生き物の呼称なのだ。多分、美少女たちは自分の最盛期の輝きを記録し、後世に語り継いでくれるスクリプターを本能的に欲しているに違いない。サムとチャーリーはとても仲のよい親友となるが、恋人の関係には踏み出せない。上級生と下級生という年齢差以上に、神に選ばれし美少女とその記録係という関係性によって2人はお互いの距離をそれ以上縮めることができない。

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