格闘ゲーム世界一の男が見る世界の風景とは? ウメハラが『勝負論 ウメハラの流儀』に込めたメッセージ
#インタビュー
16歳で格闘ゲーム『ヴァンパイアセイヴァー』全国チャンピオンとなり、17歳で格闘ゲーム『ストリートファイターZERO3』の日米大会「STREET FIGHTER ALPHA3 WORLD CHAMPIONSHIP」で優勝。若くして世界チャンピオンの座に就いて以降、数々の格闘ゲーム大会で好成績を残し「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネスにも認定されている男・ウメハラこと梅原大吾。
2004年にアメリカで開催された対戦格闘ゲームの祭典・Evolution2004の『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』部門で見せた、「背水の逆転劇」をはじめ、数々の名勝負を繰り広げてきた彼の「勝負哲学」をまとめた新著が『勝負論 ウメハラの流儀』(小学館新書)だ。ウメハラはいかにして「勝ち続ける自分」を作り上げていったのか? そして、一体何を考えながら日々の勝負に挑んでいるのか――? 世界最強の称号を持つ彼に、話を聞いた。
■のびのびと生きるための「成長」
──梅原さんの半生をまとめた前作『勝ち続ける意志力』に続く本作『勝負論 ウメハラの流儀』は、梅原さんがどういう意志を持って勝負に臨んでいるのかがうかがえる一冊になっていますね。
梅原大吾(以下、梅原) 前作は、自分が生きてきた道のりや考えていることを正直に書いてみようという内容でした。格闘ゲームファンにはそれなりに楽しんでもらえるとは予想していたんですけど、いざ出してみたら一般の人にも受け入れられたみたいで、小学館さんから「第2弾もいかがですか?」と提案されて今回の企画がスタートしました。自分としては、前作では言い足りなかった、勝負事というか、何かに取り組むときに何を大事にしているのかという部分を書いたつもりです。
──本作を通して語られているのは、一つ一つの勝敗に一喜一憂するのではなく、長期的に見た時にいかに成長できるか、という点を重視するという梅原さんの思想です。梅原さんにとって成長することとは、どういう価値を持っていますか?
梅原 もともと自分は怠け者なんです。子どもの頃から楽しくないことはやりたくないし、嫌なことがあったら投げ出してしまう。学校の宿題はまともにやらないし、授業中も眠ければ寝るという不真面目な性格だったんですが、何かに取り組みたいというエネルギーは余っていて、ゲームだけはずっとやり続けていました。ただ当時は格闘ゲーム、というかゲームがどれだけうまかろうが認められないという時代だったので、10代で世界チャンピオンになった時も全然満たされることがなかったんです。その時に、ずっと勝ちたいと思って結果を出し続けてきたけれど、それだけでは自分が満たされることはないんだって気づいたんですよ。その後、プロ雀士を目指して麻雀の世界に入ったり、介護の仕事を始めたりするんですけど、結局自分がなぜゲームや麻雀を頑張るのかと考え直した時に、自分が少しずつよくなっていくからだと思うようになったんです。
──自分の成長のために勝負し続けるわけですね。
梅原 そうですね。子どもの頃の自分にはコンプレックスがあって、人前に出たり、ゲーム仲間以外の前では自分の言いたいことが言えないというのが恥ずかしくて、“この気持ちを抱えているうちは、俺の人生はずっとこんな嫌な感じを抱えていかないといけないんだな”と漠然と感じていたんです。そんな気持ちを少しずつ和らげてくれたのが、「俺は成長している」という実感だったんです。そこで、自分が成長を実感できていれば、子どもの頃みたいに嫌な思いをせずに人生を送ることができると気づいたんです。だから、自分にとって成長とは誰かに見てもらうとか、それによってお金とか名誉を得るということではなく、のびのびと生きていくためのものですね。
──今年で梅原さんは32歳で、自分も33歳ということでほぼ同世代なんですが、30歳過ぎになると社会的に中堅どころというポジションになりつつある年齢かと思います。そこで「まだ成長しきっていない」「完成していない」ということに焦りを覚える人も、少なくはないのではないかと思います。その点、梅原さんは自分が未完成で、成長しきっていないということに楽しみを見だしているように感じます。
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