“反短パン”でパンクスだったボクが見た、ハイスタ・横山健のドキュメンタリー『横山健 疾風勁草編』
#映画 #北村ヂン
そういう意味で本作はドキュメンタリー映画というよりも、「長~いひとり語りの記録」なのだ。ライブやオフショットなどももちろん入ってはくるものの、基本的にはその映像に乗せて、自身の生い立ちからハイスタ結成~活動休止、そしてソロ活動まで横山健が延々としゃべりまくり。
ハイスタを中心とした、当時のパンク・メロコアシーンについてのインタビューとしてもなかなか興味深い内容ではあるのだが、そこにほかのメンバーや当時のバンドマン、スタッフたちの語りはほとんど入り込むことなく、モロに横山健目線で、メチャクチャ主観的な意見が語られていく。
中でもハイスタの活動停止から、その後のメンバーとの関係性などは、本人にとってもまだうまいこと整理がつけられていない事柄なのか、悩み考えながら慎重に言葉を発していて、その姿には見ていて苦しくなるようなリアリティがある。
「アルバムの原盤の所有権でモメてる」とか「メチャクチャ仲が悪いらしい」など、“ハイスタ活動休止&再結成できない理由”についてはネット上でさまざまなウワサが流れていたが、その辺のことに関しても、具体的ではないまでも、とにかくいろいろとこじれている感じが語られており、あの時点では本人たちも、そしてファンたちすらも「ハイスタ、再結成してほしいけど、まあしねーんだろうな」と考えていたのではないだろうか。
そんな時に起こったのが、3.11の東日本大震災。
当時、エンタテインメントに関わる仕事をしている人たちがみんな陥った「果たしてこんな時に、音楽や映画が必要なのか!?」という自問自答に、横山も向き合うことになる。その結果、さまざまな事柄が急展開し、復興支援や反原発を訴えていくため「一番影響力のある方法」として、まさかのHi-STANDARDが再始動。さらには2011年に横浜で、2012年に東北で復活・AIR JAMを開催することになる。
で、普通のドキュメンタリー映画だったらコレで「再結成バンザーイ!」「復興に向けて団結して頑張ってくぞ!」みたいな形で終わるのがキレイなんだろうけど、ここでもやはり横山は悩み考えてしまうのだ。
ライブやコラムなどでも「オレの曲を聴いて、そのまま受け入れるんじゃなくて考えろ!」「考えた結果、オレとは180度違う考えにたどり着いたとしても、それはそれでオッケーだと思う」などとリスナーに「考える」ことを訴えかけている横山だが、この映画でもまた答えを提示するのではなく、横山健と一緒に「考える」ことを強要される。
だって、震災からの復興も、原発も、そしてハイスタやAIR JAMの未来にだって、誰もキレイに答えなんて出せてないんだもん。
そこで、うまいこと映画としての答えを出さず、泥くさくアレコレ考えている姿をそのまんま見せつけたこのドキュメンタリーは、見ていてモヤモヤさせられ、そしていろいろと考えずにはいられなくなるのだ。
まあ横山健の「こんなにいろいろ考えて悩んでる人、一緒に仕事とかしたらめんどくさそうだなぁ~」……という感じもガンガン伝わってきたんだけど、とりあえず映画館の暗闇の中、メチャクチャ距離感近く語りかけてくる横山健とともにモヤモヤウダウダ考えていく、という映画体験はなかなか貴重な時間だった。
ちなみにタイトルに入っている、意味どころか、なんて読むのかもよく分からない「疾風勁草(しっぷうけいそう)」という言葉だが、インターネッツで調べたところ「苦境や厳しい試練にあるとき、初めて意志や節操が堅固な人であることが分かるたとえ」とのこと。ああーっ、横山健ってそんな感じ!
(文=北村ヂン)
●『横山健 疾風勁草編』
監督:MINORxU 出演:横山健 企画・制作:PIZZA OF DEATH RECORDS 配給:KDDI「Live’Spot」 上映時間:117分 上映劇場数:60館
(C)PIZZA OF DEATH RECORDS 2013
11月16日(土)~11月22日(金)1週間限定ロードショー
<http://livespot.jp/lv/detail/kenyokoyama.html>
●初日舞台挨拶
・日程:2013年11月16日(土)19時~
・会場:ユナイテッド・シネマ豊洲
最新情報はLive’Spotサイトにて
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