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屠場は本当に美しかった! 今夜は焼き肉にしたくなる、ドキュメンタリー『ある精肉店のはなし』

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 食卓に欠かせない牛肉だが、それがどのように生産されているのかという話になると、多くの人は目を背ける。それは、食肉産業には被差別部落で伝統的に行われてきた一面があり、現在もそうだからである。この作品は、そうした世間がタブー視し、目を背けるものにもアプローチをしていく。カメラは、結婚することになった一家の次男の婚約者にも、部落の問題を問いかけたりするのだ。

 ともすれば、伝統的な左翼の香りのする社会派のテイストになりそうなテーマ。ところが、本作には「差別をなくそう」的な説教臭さは一切ない。誰もが、7代にわたっておいしい牛肉を生産し続けてきた北出精肉店の一家に親しみを感じ、腹の虫を鳴らすハズだ。

 この一家に密着し続けた纐纈監督も、最初に魅せられたのは屠畜された肉牛の美しさだったという。

「出会いは2008年の初頭です。今回、映画が上映されるポレポレ東中野で食べ物にまつわる映画の特集があったのですが、その時に、一点の枝肉を吊るした写真が展示されていたんです。それを見て、美しいと感じました。それまで、屠場にあった冷たく暗いイメージとはまったく違う写真でびっくりしましたし、枝肉を美しいと感じる自分にもびっくりしました」

 それが、写真集『屠場』(平凡社)として刊行された本橋成一氏の作品であった。それがきっかけで、本橋氏に同行して大阪府松原の屠場を見学した纐纈監督は、さらに屠場に魅せられた。肉牛を食肉にしていくという作業は、全身を使わなくてはできない。その作業が行われる現場には、それまでに見たことがなかったほどエネルギーが充満していたのだ。

 「これは、ぜひ映画にしたい」と感じたが、当然、簡単なことではなかった。その思いが動き始めたのは11年に写真集『屠場』が刊行された時のこと。刊行に併せて大阪人権博物館で展覧会を主催した知人から、纐纈監督は北出精肉店のことを聞かされた。そして撮影されたのが、映画の冒頭で映し出される見学会の模様だ。当初は、これが最後の屠畜になる予定だった。

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