“人種差別”の壁に挑んだ男たちの実録ドラマ! 背番号が与える重みと力『42 世界を変えた男』
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リッチー会長と契約を結んだロビンソンがグランドに一歩足を踏み入れると、尋常ではないプレッシャーが襲い掛かってきた。敵チームや観客は「ニガー! ニガー!」の大合唱、ロビンソンの頭部を狙ってビーンボールが投げられ、俊足を活かしてベース上を駆け抜けても塁審はアウトを宣告する。チーム内では「黒人選手の参加は認めない」という署名運動が水面下で進められていた。リッチー会長はグランドの中までは助けに来てくれない。そんな孤立無援の状況で、どうしてロビンソンは耐えることができたのだろうか?
ロビンソンが対戦相手や観客のヤジに切れてしまったら、ようやくリッチー会長が開けてくれたドアを自分で閉めてしまうことになる。そのドアの向こう側で待っているニグロリーグの同胞たち、将来を夢見る若い選手たちの可能性をすべて潰すことになってしまう。黒人アスリートたちの未来が、ロビンソンの言動やプレーのひとつひとつに託されていたのだ。ロビンソンが背負った“42”という背番号はとてつもなく重かった。だが、その重みがロビンソンをグランドに踏みとどまらせた。
ロビンソンがメジャーリーガーとなってどれだけ大活躍したかは、野球好きな人ならご存知だろう。1956年に現役引退したロビンソンは公民権運動に積極的に参加し、1964年になって人種隔離法はようやく廃止となる。リッチー会長とロビンソンがたった2人で始めた非暴力革命は、全米中に多大な影響を及ぼすことになった。ロビンソンの成功に刺激され、サチュル・ペイジは42歳にしてメジャーリーグ入りするなど、ニグロリーグの有力選手たちは次々と大舞台へと挑戦していく。その結果、ニグロリーグは急速に人気を失い、リーグ解散を余儀なくされた。“42”という数字が偉大なる伝説となった影で、伝説を生み出す豊かな土壌を誇ったニグロリーグという世界が存在したことも記憶しておきたい。
(文=長野辰次)
『42 世界を変えた男』
監督・脚本/ブライアン・ヘルゲランド 出演/チャドウイック・ボーズマン、ハリソン・フォード、ニコール・ベハーリー、クリストファー・メローニ、アンドレ・ホランド、ルーカス・ブラック、ハミッシュ・リンクレイター
配給/ワーナー・ブラザース映画 11月1日(金)より全国公開
(c)2013 LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.
<http://wwws.warnerbros.co.jp/42movie>
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