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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.244

人間とハエとの恋愛は果たして成就するのか? インドからやって来た“虫愛づる姫”『マッキー』

makkhi001.jpgハエとなったジャニは、ビンドゥ(サマンサ・ルス・プラブ)に協力してもらい肉体トレーニングを開始。昆虫版『ロッキー』(76)の世界です。

 日本語吹替え版で悪役スティープのボイスキャストを担当したのは中村獅童。中村獅童によると、歌舞伎界にはハエに関して言われがあるそうだ。中村獅童は2012年12月に亡くなった中村勘三郎にずいぶん引き立ててもらっていたが、中村勘三郎は決してハエを殺そうとしなかったという。中村勘三郎の父親・17代目中村勘三郎が「俺が死んだらハエにでもなって、みんなを見張ってやる」と生前に言い残していたからだ。中村勘三郎が舞台上で口上を述べる際にハエが手に留まったりすると、「先代が見守ってくれている」と感じていたらしい。肉体を失ってからも、魂は愛するもののことをずっと想い続けている。残された者がそう信じることで、魂は本当に生き続ける。歌舞伎界とインド映画に、汎アジア的な死生観が共に流れていることも興味深い。

 ハエとなったジャニから見れば、極悪人スティープは“進撃の巨人”ばりの大巨人。一匹のハエがありとあらゆる手段を講じて、人間に立ち向かっていく姿が何ともいじらしい。ハエと人間との戦いは壮絶なバトルへと向かっていく。さて、インド映画といえば最後は歌って踊っての大ハッピーエンディングがお約束なのだが、本作には一体どんな結末が待っているのだろうか? ハエとなった主人公ジャニは愛するビンドゥのために、映画史上かつてない無償の愛を捧げることになる。もはや愛というより、業(カルマ)である。走り出したカルマは、もうどうにも止まらない。ジャニが恋人のために生まれ変わったように、インド映画自体も大きく生まれ変わろうとしている。
(文=長野辰次)

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『マッキー』
原作・脚本・監督/S.S.ラージャマウリ 音楽/M.M.キーラヴァーニ 出演/ナーニ、スディープ、サマンサ・ルス・プラブ 配給/アンプラグド 10月26日(土)よりTOHOシネマズ六本木ほか全国公開 
(c)2012 Varahi Chalana Chitram. All rights reserved.
<http://masala-movie.com/makkhi>

最終更新:2013/10/24 22:05
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