尾崎豊、BOOWY、ブルーハーツが豪雨の中で競演! 地獄の第1回フジロックよりヒドい、史上最低のロックフェス
#映画 #インタビュー
「いや、メディアの方々もBEATCHILDのことは知っていたし、取材にも来てたんだけど、みんな雨でカメラがダメになったり、ライヴを1本(1アーティスト)撮ってしまったら仕事終わり、みたいな感じだったんです。豪雨に恐れおののいて、帰ってしまったんですね。それに人って、すごいショックなことがあると口をつぐんでしまうじゃないですか。あの時は、みんながそうだったんじゃないかと思いますね。だけど今こういうことがあったら、すぐにネットに載って、誹謗中傷が始まったり、重箱の隅をつつくような状態になりかねない。でもBEATCHILDは幸か不幸かそんな状況にさらされることもなく、封印され、守られ、タイムカプセルに入った状態で、こうして映画になったんだと思います」
ところで、この映画で違和感を覚えるのはナレーションだ。これは制作サイドの意図なのだろうが、26年前の映像に、やれロックの魂だとか7万2000人の思いがどうとか、クサすぎるほどの美辞麗句を乗せているのが、どうにも引っかかるのである(監督は、数々のCMや、音楽畑ではビデオクリップやドキュメンタリーなどの秀逸な作品を残してきた佐藤輝)。何しろ実際の現場は、どう見てもロックとか魂どころではない過酷さで、それを今の視点でヘンに美化しているように思えて仕方がない。もっともあの頃の音楽シーンにそうした過剰な熱意があったのは確かだし、それを持つ人間たちがいたからこそ、こうした無謀な状況での一大イベントが奇跡的に完遂されたのだとも思うのだが。
「<ロックは心構えだ>みたいなセリフがあって、私もすごいなと思いました(笑)。あの信じがたい状況と、しかも26年も前、重さあっての言葉だと。私のパートでは、舞台からバンドのメンバーもモニターさえも何もなくなっても歌ったことを今回の制作スタッフにお伝えし、その状況を伝えるコメントを付け加えていただきました」
ともかく、80年代後半のメジャーなロック・シーンの一断面がこの映画にあることは間違いない。イベントの序盤に登場するTHE BLUE HEARTSや岡村靖幸はオーディエンスにまだ完全に認知されていない初期のライヴだし、今では音楽以外の場で見かけることも多いDIAMOND☆YUKAIが艶やかにシャウトするRED WARRIORS、雨に濡れてもクールなTHE STREET SLIDERS、翌年に解散するBOOWYといったバンドの演奏シーンには圧倒される。DVD化される予定のない本作品を見に映画館に足を運ぶメイン層は年配の音楽ファンであろうが、若い人たちでもなにがしかの感慨を覚えるのではないだろうか。
「私は今あらためて、あの時来てくれた7万2000人の方に、感謝の気持ちでいっぱいです。それは多くのアーティストが同じ気持ちだと思います。会場周辺の学校の子どもたちにはBEATCHILDに行かないように指導があったそうですし、とにかくあの場所にいてくれたみんな、そしてライブを見たくても寒さに倒れ、見られなくて悔しい思いをした人にも、ぜひ見てもらいたいですね」
(取材・文=青木優)
●『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987』
監督/佐藤輝 音楽監督/佐久間正英 出演/THE BLUE HEARTS、RED WARRIORS、岡村靖幸、白井貴子、HOUND DOG、BOOWY、THE STREET SLIDERS、尾崎豊、渡辺美里、佐野元春(出演順) 配給/ライブ・ビューイング・ジャパン、マイシアター 10月26日(土)よりイオンシネマ、TOHOシネマズ、Tジョイほか全国ロードショー (c)BEATCHILD1987製作委員会 <http://www.beatchild.jp>
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