この国では、世間さまに嫌われたら有罪――『リーガルハイ』の宣戦布告
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明らかに、どこかで聞いたことのあるような経歴の鮎川に対し、古美門はさらに続ける。
「フィクションの名のもとに、明らかにあなたをモデルにした人物を登場させ、笑いものにしているクソドラマやヘボ小説が山ほどある。どいつもこいつも、根こそぎ訴えようじゃありませんか!」
しかし、鮎川は古美門の弁護を拒否。自分自身で戦う本人訴訟を彼は選んだのだ。
そして古美門は自分が訴えようと提案したばかりの、パロディ漫画を描いて訴えられた「フィクション」側の弁護士として鮎川と対峙する。古美門にとって、世間が考えるような善悪は無関係。依頼人の善こそがすべてだ。
今作では新しく羽生(岡田将生)という「人たらし」の弁護士が新レギュラーとして加わった。彼は「お互いが譲り合って、みんながHappyになれる落としどころ」を探り、「双方がWin-Winになる道を見つけるために裁判がある」という考えの男だ。戦って傷を負うことを嫌い、「戦わない」ことを選ぼうとする。
古美門の正義は「金」である、と本人も高らかに宣言している。けれど、そうではないのかもしれない。古美門にとっての本当の正義とは、「戦うこと」それ自体ではないだろうか。
前作でも彼は、訴訟を取り下げようとした原告団の住民たちに「これがこの国のなれ合いという文化の根深さだ」と吐き捨て、「誇りある生き方を取り戻したいのなら、見たくない現実を見なければならない。深い傷を負う覚悟で、前に進まなければならない。戦うということは、そういうことだ!」と大演説で鼓舞していた。
戦うことでしか、何も生まれない。目の前の問題を見て見ぬふりをして先送りにしては、何も解決しない。それは今、「フィクション」を作ることに対する作り手としての心構えと心意気とが重なっているように見える。
鮎川と怒涛の攻防を繰り広げた古美門は、したたり落ちる汗も気にせず「もっとやろう」と不敵に笑った。
「勝つか負けるか、最後まで徹底的に戦うぞ!」
それは古美門の、いや『リーガルハイ』の世間に対する宣戦布告かのようだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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