武田鉄矢が語る、ユニークすぎるアジア文化論『101回目のプロポーズ』が愛される理由とは?
#インタビュー
──『101回』は国境を越えて愛されるテイストだったわけですね。
武田 そうだと思うなぁ。よくシコシコ麺だとか喉ごしツルツルだとか麺類が好きな人はこだわるよね。歯ごたえや喉ごしって、実は英訳できないんだってね。麺をすする楽しさ、味わいっていうのはアジア人特有のものらしい。自分が出演し、好評だったこともあり、『101回』のことを僕は愛しているわけだけど、あのドラマは麺類が愛されるのと同じようにアジア中に広まったんじゃないかなぁ。ミャンマーでは視聴率90%だったらしいよ。といってもテレビを持っている人は1000人にひとりの割合らしいけどね(笑)。でもなぜ、こうもアジア一帯で『101回』は人気を得たのか。わかり易い言葉にすれば、それは“格差”ですよ。
■男女にとっての究極の恋愛ドラマ、それは“異類婚”!
──90年代に純愛ブームを呼び起こした『101回』のテーマは“格差”だった?
武田 僕みたいな男が、浅野温子みたいなイイ女に恋をする。その設定はまさにノンリアリティーなんだけど、僕も浅野温子も懸命に演じたわけです。格差という言葉は冷たく感じるけど、恋愛ってそもそも格差じゃないかな。格差のない恋愛って、つまんないですよ。同じ価値観を持つ男女がお友達感覚でくっついても、簡単に別れちゃう。芸能人でも多いでしょ、そういうカップル。つまりね、男と女って違う世界に住んでいるからこそ、激しく恋が燃え上がるわけです。日本のおとぎ噺は、そんな男女の話ばっかりじゃないですか。絶世の美女にある男が恋をするけど、その美女は実は雪女だったとかね。よくできた女房は本当は鶴だったとか、平凡な男が天女に恋をしてしまうとか。遠野には娘が馬と結ばれた逸話が残されているし、日本書紀や古事記では蛇が嫁をもらうわけです。昔話の世界は格差なんて生易しいもんじゃない、人間という種を越えて異類と恋におちてしまう。異類婚の伝説は日本だけじゃなくて、アジア各地に残っている。自分とはまるで違うものに魅了されるという面白さ、激しさが一種のアジアンテイストなのかなぁ。
──なんと、『101回』は現代の異類婚ですか!?
武田 『101回』が人気を集めた国を見てみると、まぁ異類とは言わないけど格差がある社会ですよ。香港で『101回』がリメイクされたときは、韓国の大スター、チェ・ジウが矢吹薫役でなくてはダメだったわけです。そんな大スターに、中国から出稼ぎにきた男が恋をしてしまうというね。格差を乗り越えて、手の届かない存在に恋をする。それが『101回』の面白さじゃないかな。
──『レッドクリフ』(08)にも出演した台湾の誇る美人女優リン・チーリンが、劇場版『101回』のヒロインに。まさに適役ですね。
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