独創的な世界観は健在 松本人志、監督第4作『R100』の評価は?
#映画 #松本人志 #R100
今週は、漫才コンビ「ダウンタウン」でお笑いの頂点を極め、映画監督としても新たな表現を開拓している松本人志と、美男俳優として人気を博し、監督デビュー作でいきなりオスカーを獲得したロバート・レッドフォード、日米2人の才人による最新作を取り上げたい(いずれも10月5日公開)。
『R100』(R15+)は、2007年のデビュー作『大日本人』以来、2年に1本のペースで長編映画を撮ってきた松本人志による監督第4作。大手家具店に勤務し、家庭では良き父親の片山(大森南朋)は、秘めたマゾ趣味を抑えきれず、謎のクラブ「ボンデージ」に入会する。それ以降、ボンデージ衣装に身を包んだ美女たちが不意に片山の日常に現れ、肉体的、精神的な責めを繰り出す。そのたびに至福のひとときを味わう片山だったが、やがて職場や自宅にまで女たちが出没し、生活を脅かすようになる。
冨永愛から唐突に回し蹴りをくらい、佐藤江梨子には握り寿司を平手で無惨につぶされるなど、さまざまな受難に大森が浮かべる恍惚の表情がたまらない。大地真央、寺島しのぶ、片桐はいりもボンデージ姿の“女王様”に扮し、松尾スズキ、渡部篤郎らが脇を固める。主人公の顔をCGでマンガ的にデフォルメする手法に戸惑うかもしれないが、後半で不条理の傾向を強めていく展開も含め、松本監督流の独創的な世界を楽しみたい。
『ランナウェイ 逃亡者』は、名優ロバート・レッドフォードが『大いなる陰謀』以来5年ぶりの監督・主演で手がけた社会派サスペンス。ベトナム戦争の時代、反戦を訴え連続爆破事件を起こした過激派グループ「ウェザーマン」の主要メンバーは、FBIに指名手配されながらも正体を隠して30年間米国各地で暮らしてきたが、その一人ソラーズ(スーザン・サランドン)が逮捕される。事件の調査を始めた新聞記者シェパード(シャイア・ラブーフ)は、模範的な市民と評判の弁護士が実は主犯格のスローン(レッドフォード)であると突き止め、スクープ記事で驚がくの事実を暴く。スローンは築き上げた生活を捨てて逃亡を開始し、FBIとシェパードに追われながら、ある目的を果たそうとする。
俳優、監督としての輝かしいキャリアはもちろん、若手映画人の発掘育成を主眼とするサンダンス映画祭の主催や、環境保護活動など、社会への積極的なコミットでもよく知られるレッドフォード。表現者として、また個人としても、「人間と社会」にこだわり続ける監督が、実在した反体制組織ウェザーマンを題材に、社会を変えるという理想と現実、過去の行いと向き合うこと、真実の追求といったテーマを盛り込んだ。緊迫感に満ちたダイナミックな逃亡劇と、激情を秘めた静かな対話場面の切り替えも絶妙で、最後まで飽きさせない。リチャード・ジェンキンス、ニック・ノルティ、クリス・クーパー、アナ・ケンドリックと共演陣も豪華だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『R100』作品情報
<http://eiga.com/movie/78690/>
『ランナウェイ 逃亡者』作品情報
<http://eiga.com/movie/78046/>
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