二階堂ふみとのデートは“地獄めぐり”で決まり!“史上最凶”のアイドル映画『地獄でなぜ悪い』
#映画 #園子温 #パンドラ映画館 #二階堂ふみ
わずか8日間で、どーすれば「永遠に刻まれる一本」を撮り上げることができるのか。今さら脚本を書き上げる余裕はない。だが、逃げ場のない状況でこそ、アイデアが生まれるもの。映画のスポンサーである武藤たちに敵対する池上組を襲撃させ、その様子をドキュメンタリー映画として撮影すればいい。『ゆきゆきて、キルビル』だ。かつてないシチュエーションに、映画界を舐めきっていたミツコの女優魂に火が点く。武藤組の襲撃を受けて立つ池上(堤真一)もミツコの隠れファンで、撮影には協力を惜しまないと申し出てくれた。一連の騒ぎに巻き込まれた平凡な若者・公次(星野源)もミツコに魅了され、ついつい撮影に参加してしまう。大コーフンの抗争が始まり、もはやヤクザも撮影スタッフも区別がない。ヤクザたちと一緒になってカメラはシューティングし、そして一瞬一瞬のカットを切り取る。みんな生きるか死ぬかの瀬戸際で、ドーパミングがドパドパと流れ、シャブが粉雪のように舞う。虹色に輝く桃源郷で、ヤクザたちをバッタバタと斬り倒していくミツコの美しさは格別だった。ミツコの輝きは、破壊を無上の喜びとする阿修羅のようだ。ミツコは地獄に足を踏み入れたのではなく、ミツコ自身が地獄そのものだったのだ。カメラは自然にミツコに引き寄せられていく。
これまで自分の体験談を作品に投影してきた園子温監督だが、『地獄でなぜ悪い』はより自伝色が強いものになっている。若い頃、短期間だけ交際した女性から数年後に呼び出され、とある建物に連れて行かれたそうだ。そこはヤクザの事務所で、女性は組長の娘だった。劇中の星野源のように難癖付けられまくった園監督は、危うくコンクリート詰めになるところを九死に一生を得たらしい。でも、まぁ、男って危険な匂いのする女性にどうしようもなく惹かれてしまうもんスなぁ。自主映画サークル「ファック・ボンバーズ」も実在した集団。園監督が16ミリフィルムで『自転車吐息』(90)を作っていた頃、「ファック・ボンバーズ」を名乗ってメンバー募集のチラシを配ったそうだ。このとき、チラシを片手に園監督のもとを訪ねたのが後に『片腕マシンガール』(08)で世界を震撼させることになる高校時代の井口昇監督だった。ビッグネームになる前の鬼才たちが、映画づくりを夢見て出逢っていたというちょっといい話。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事