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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 高嶋政宏の面倒臭さ全開
ラジオ批評「逆にラジオ」第30回

高嶋政宏のプログレッシブな面倒臭さ全開の10時間ラジオ『今日は一日“プログレ”三昧3』

 ほかにも、荒木アナがプログレならではの長く面倒な曲名に出てくるカッコや「~」まできっちり読まないと急に不機嫌になったり、NEU!(ノイ!)というバンド名の「!」の部分が伝わるように語尾を強調して読んでほしいと言いだすなど、高嶋の面倒臭さは留まるところを知らない。ところが、次の箇所でその読み方を高嶋の指導通りに実践すると、「いいですよ、いいですよぉ」と村西とおる口調で突如、別人のように上機嫌になるあたり、驚くほどの純粋さをも感じさせる。

 しかしこの、理屈であって理屈じゃない感じ、そして自己矛盾を抱えたまま進んでいく話の展開の読めなさは、まさにプログレ的なこじれ方といえるかもしれない。言われている方からしてみれば、単なる面倒なオヤジだが……。まさに山田五郎言うところの「プログレ・ハラスメント」である。

 しかし同時に、その面倒臭さこそがこの番組の魅力でありプログレという音楽の魅力でもあって、そこを明確に自覚している山田が司会を務めているというのが、やはりこの番組の肝だろう。マニアとしてジャンルの内側にいながら、同時に外側からの視点をも持ち合わせている。内部にマニアックな知識欲を抱えながら、常に外側に向けて開かれた言葉を持っている。この日は20代女性から寄せられたメールも多く読まれ、中には10代のリスナーまでいて驚いたが、そういった70年代プログレ全盛期を知らないリスナーが増えているのは、山田がプログレ及びプログレファン(自身含む)を形容する際たびたび口にする「面倒臭い」という言葉があるからだろう。

 通常、マニアがビギナーをその世界に引き入れるためには、何よりもまずその簡単さや取っつきやすさをアピールするものだが、マニア側にいる彼の口から「プログレは面倒臭い」という言葉が発せられることによって、逆に面倒臭いからこそプログレがいい音楽なのだということが伝わる。彼のように、マニアックなものに接したときの第一印象を持ち続けている人の言葉を聴くと、どんなマニアであっても、誰もが初めは初心者であったということに思い当たる。そしてその言葉につられて聴いてみると、プログレも高嶋政宏も、間違いなく面倒臭くて面白い。いや、面倒臭いから面白い。趣味にしろ人間にしろ、実はほとんどのものがそうなのだ。実に面倒臭く、真の意味でプログレッシブな音楽番組である。
(文=井上智公<http://arsenal4.blog65.fc2.com/>)

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最終更新:2013/09/30 11:22
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