体力の限界? 業界への不満? “ミスターAV男優”加藤鷹が卒業を決意した、ホントの理由
#アダルト #インタビュー #北村ヂン
鷹 本当にいいモノを作りたいと思っていれば、たとえば監督が自分のギャラを多少減らして……っていう発想になると思うんだけど、今、そういう発想でAV撮ってるのってTOHJIRO(AVメーカー「ドグマ」代表取締役)くらいしかいないと思うんだよね。あの人はもともと映画屋さんだから。黒澤明の時代から、映画を作る人は銭金なんてどうでもいいんだよ。自分の撮りたいモノを作って、それで赤字になっても関係ない、みたいな。まあ、それが許されない時代なんだろうけどね。だから、日本映画もアダルトビデオもショボくなってるよ。
――サラリーマン気質の監督が増えているということですかね?
鷹 もう監督ともいえないよ。会社から「こういうの撮って」という紙が来て、その通りに作るということしか考えてないんだから。別に昔がよかったとも思わないけど、単純に志が高い人間が多かったような気がする。「給料が安くても、エロ好きだからいいんですよ!」っていうヤツがいっぱいたからね。だから、よく「鷹さんに続くスター男優が出てきませんね」なんて言われるけど、別に若手が悪いわけじゃなくて、スター男優を育てられない今の業界自体に問題があると思う。
■国会議員・加藤鷹誕生!?
――AV男優卒業の話に戻りますけど、いつか辞めるだろうなっていう発想はあったんですか?
鷹 5~6年前まではなかったね。
――その頃、何があったんですか?
鷹 ずーっと、AV男優っていう肩書にこだわりもあったし、現役であるということにもこだわりがあったんだけど、やっぱり痛々しく見えたらアウトだな……って思いだしたのが5~6年前の話。ジャイアント馬場みたいに、周りからどう思われようと生涯現役みたいな生き方も美しいとは思うけどね。それに、「加藤鷹」というイメージが強すぎて、自分のやりたいと思っていることと世間のイメージが合わないというジレンマは感じていたんで。
――やりたいことというのは?
鷹 たとえば、よく女性雑誌なんかで性の悩みを抱えている女性の相談に乗ったり……という企画があるんだけど、そこでオレに求められるのはAV男優としての軽いコメントなんだよね。ヘタな性教育の先生よりも、性の知識は豊富だと思うし、本当はもっと真剣に悩みに答えてあげたいという気持ちも持っているんだけど、「AV男優」という肩書があるうちはなかなか難しいな、とか。
――確かに鷹さん、イベントなどでは真面目にその辺を語ったりしますしね。
鷹 だから「いつか離れるべきなのか?」「いつか辞める時が来るだろうな」というのは少しずつ考えるようになって。んで、決め手になったのが2年前に親父が亡くなったこと。オレも今、54歳だし、仕事をバリバリやれるのも、あとせいぜい10年くらいかなって思って……。その10年で何をやりたいか、と考えていったらAVから離れるのもいいかなと。
――今後、一番やりたいことってなんですか?
鷹 うーん、まあ今年いっぱいはAVも続けるし、それからのことは模索中だよね。でも実は去年、会社を作ったの。
――えっ、なんの会社なんですか?
鷹 会社の定款に書かなきゃいけないんで、アプリの制作だ、飲食業だ……と、なんでもかんでも入れちゃったよ。もう、なんでも屋状態。それで会社の名前は「株式会社 加藤鷹商店」(笑)。もちろん、今までやって来たことと、まるっきり無関係なことはしないとは思うけどね。
――じゃあ、今後は会社社長として頑張っていくわけですね。
鷹 社員ゼロだけど(笑)。それと、以前からお世話になっていた性教育の先生が、去年の衆議院選で国会議員になって。その先生から、冗談半分に「議員にならないか」って誘われてたりもするんだけど。
――おおーっ、まさかの政界進出! 鷹さんの知名度だったら、AV業界から初の国会議員もあり得ますよ!
鷹 昔、「AV新党」ってのもあったけどねぇ(笑)。まあ、今年いっぱいでAV男優を卒業してからが本当にスタートだと思っているので、そんなに期待しないで待っていてください!
(取材・文・写真=北村ヂン)
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