日米“サムライ対決”の勝敗は!?『ウルヴァリン:SAMURAI』『許されざる者』
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今週も数多く封切られる新作映画の中で最注目は、ウエスト・ミーツ・イーストな“サムライ対決”! アメコミヒーローが日本を舞台に刀を振り回す敵役と戦うハリウッド製アクションと、オスカーに輝く傑作西部劇を北海道開拓時代の物語としてリメイクした日本映画を紹介したい(いずれも9月13日公開)。
『ウルヴァリン:SAMURAI』は、『X-MEN』シリーズの人気キャラクターを主人公としたスピンオフ作品『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(09)の続編。カナダで隠遁生活を送っていたウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)は、かつて命を救った大物実業家・矢志田に請われて東京を訪れる。重病を患っていた矢志田は、再会を果たした直後に死去。葬儀の会場で孫娘マリコが謎の武装組織に拉致されかけたことから、ウルヴァリンはマリコと共に西日本へ逃れる。だが、矢志田家の内部に潜入していた女ミュータントにより、ウルヴァリンは不老不死を支える驚異的な治癒能力を奪われ、かつてない危機的な状況で敵と対峙する。
本作のハイライトの1つは、矢志田の息子シンゲンに扮する真田広之と、ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンとの真剣勝負。40代半ばながら筋肉隆々の裸上半身をさらすジャックマンと、50代前半で依然衰えないスピーディーな太刀さばきの真田による迫力満点の死闘は、単純な興奮や高揚感だけでなく、さまざまな感慨をも日本人観客にもたらすはず。ウルヴァリンと恋に落ちるマリコ役のTAOと、赤毛で武闘派のユキオに扮した福島リラは、共にモデル出身だが重要なキャラクターを魅力的に演じ、今後のさらなる活躍が期待される。監督は『“アイデンティティー”』(03)、『ナイト&デイ』(10)のジェームズ・マンゴールド。新宿駅や上野駅、増上寺といった日本の見慣れた風景の中にアメコミヒーローが存在しているという微妙な違和感や、外国映画にありがちな「ニッポンの変な描写」も含め、大いに興奮し随所で笑える娯楽作だ。
もう1本の『許されざる者』は、クリント・イーストウッド監督・主演で第65回米アカデミー賞で、作品賞など4部門を受賞した西部劇『許されざる者』(92)を、『悪人』の李相日監督がリメイクした作品。江戸時代末、幕府軍最下層の兵士として大勢の志士を斬りまくり「人斬り十兵衛」と恐れられた男(渡辺謙)が、幕府崩壊後の明治初期に北海道へ逃れ、人里離れた土地で細々と暮らしていた。亡き妻に「二度と人は殺さない」と誓った十兵衛だが、2人の子どもを養えないほどの貧困に追いつめられ、不良開拓民に懸けられた賞金を稼ぐため再び刀を手にする。
オリジナルが持つ骨太なエッセンスをそのままに、北海道の雄大な景観、明治初期の開拓時代、辺境地に落ち延びたかつての人斬り侍、先住民と開拓民との関係といった要素で見事に再構築したリメイク作。罪の重みに耐える男の佇まいから、怒りと痛みと悲しみを鬼気迫る表情で演じた終盤の大立ち回りまで、渡辺謙による重厚で味わい深い演技が絶品だ。柄本明、佐藤浩市、柳楽優弥ら共演陣も、コントラストの効いたアンサンブルで物語を盛り上げる。オープンセットが建てられた大雪山山麓の美しく広大な自然、水平方向の被写体配置を強調した構図など、ぜひ大スクリーンでその魅力をたっぷり味わっていただきたい。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『ウルヴァリン:SAMURAI』作品情報
<http://eiga.com/movie/77469/>
『許されざる者』作品情報
<http://eiga.com/movie/77402/>
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